天の神に祈る ネヘミヤ2:1~8

 「指導者ネヘミヤ」シリーズ第2回は、リーダーの最も大切な資質について考える。

 ネヘミヤはアルタシャスタ王の側近の献酌官として仕えていたが、ある日、王に顔色が悪いと指摘された。それを機会にユダヤ人の都エルサレムが廃墟となっている事がネヘミヤの憂いの原因であると告げた。
王は、「では、あなたは何を望むのか」(4節)と尋ねた。数ヶ月祈り続けたチャンスが到来した。今だ。ネヘミヤは瞬間的に祈った。「そこで私は、天の神に祈ってから、王に答えた。」(4~5節)
ネヘミヤの提案を受け入れた後、王は詳細な質問してきたが、ネヘミヤはそのすべてに的確に答えるだけでなく、工事実施に必要な王の許認可をその場で求めた。(6~8節)
 ネヘミヤは、大胆であり、緻密な人だった。ひざまずいて祈る人であり、行動の人だった。その中でも目を引く指導者としての資質は、一番大切なものを見分ける能力だ。今日は、このポイントを考えてみたい。

 ネヘミヤはエルサレムの窮状を聞き、断食して祈る中で考え抜いた。ユダヤ人全体にとって励ましと希望になる行動は何か。神の栄光になることは何か。今の自分の立場と能力を使って奉仕できることは何か。その答えが、エルサレムの城壁の再建だった。これは、現地に住んでいたユダヤ人ですら、不可能とあきらめていた一大事業だった。

 普通の人は、なにげない繰り返しに埋もれて生活している。日常という瓦礫の山にうずもれている。不平は言うが、何も変えようとしない。何も見えていない。けれども、真のリーダーは、なにげない繰り返しの毎日から、問題の本質を切り出す能力を持っている。最も大切な目的や理念を提示し、力とエネルギーを集中できるよう呼びかけることができる。これが、指導者に最も必要な資質だ。

 組織の指導者や企業家たちは、大きくなる方法や流行している方法を追い求めるが、いかにすれば(How to)に注目するのではなく、何のために(For what)に焦点を当てることが大事だ。
何が問題の本質か見極める分析力。物事の骨になる部分を提示できること。それが指導者にとって、最も大切な資質だ。

 日本で牧師をしていたとき隣家が火事になり、私はわずかばかりだが消化の助けをした。後日、消防署から電話があり、表彰したいという。ところが、表彰されたのは近所の男性と家内だけだった。私も家中に散っていた小さな炎を消したのだが、消防署によると、冷静に消防署に連絡し、プロパンガスの元栓を締めた功績から家内が表彰に値するという。本質を突いていたのは家内だった。さすがプロパンガス屋の娘、プロパン爆発事故の惨事を見聞きしていたので、決死の覚悟で元栓を締めたのだろう。

 物事で大事なのは、枝葉ではなく幹だ。粘土細工でいえば、細かい仕上げをする前に、全体の構造を支える骨組みをきちんと作らなければ話にならない。

 骨が大事だ。幹が大事だ。本質が大事だ。目的が大事だ。

 聖書の中には神の命令が多くある。その中でも、神を愛す(マルコ12:30)、人を愛す(マルコ12:31)、福音を伝え弟子を育てる(マタイ28:19~20)などは基本中の基本の命令だ。これを人生の骨とするなら、失敗はない。

 サドルバック教会のリック・ウォレン牧師は、5つの目的を聖書から切り出した。
 1、あなたは神の喜びのために造られた
 2、あなたは神の家族となるために造られた
 3、あなたはキリストのようになるために造られた
 4、あなたは神に仕えるために造られた
 5、あなたは使命のために造られた

 実にみごとな真理の提示だ。同教会は、この5つの目的を骨として掲げ、クリスチャンが各自の賜物や使命に応じてさまざまな形で肉付けし具体的な活動実を行っている。
 
 あなたの人生を貫く目的は何だろう。あなたが所属する教会のミニストリーの目的は何だろう。あなたの仕事の中心は何だろう。以下にそのヒントを挙げた。
 ○あなたの心に響く神の命令とは何か。
 ○神があなたを喜んで応援してくれることは何か。
 ○主イエスが、「あなたを誇りに思う」と言ってくれる事は何か。
 ○あなたにとって悔いのない人生とは何か。
 ○あなたに与えられた賜物は何か。
 
 「私の神の恵みの御手が私の上にあったので、王はそれをかなえてくれた。」(8節)