十分考えた上で ネヘミヤ5:1~19

 落胆していたエルサレムの人々にビジョンを与え、城壁建設プロジェクトを具体化して多くの人の協力を取り付けたネヘミヤは類まれなるリーダーである。敵の脅しにも屈することなく、片手に槍を持ち工事を継続、工事は順調に見えた。
 だが、次の難問は内側から噴出した。貧しい人々も建設工事に協力していたが、日銭が稼げず、生活に困窮してしまった。彼らの話によれば、借金の担保に畑を渡した者がおり、人によっては担保物権も底をつき、息子や娘を奴隷として人手に取られた者たちもいた。(1~5節)彼はは、問題の持っていき場所がなく、途方に暮れていた。
 ネヘミヤはこれを聞いて怒った。そして、十分に考えた上で行動に移した。

1、判断力

 ネヘミヤは、たとえ自分を支援してくれる有力者であっても、彼らを恐れずに批判した。(7~8節)自分を支持する金持ちを優遇するのが政治家の常だが、ネヘミヤは違う。金持ちで権力を持つ人々の問題点をはっきりと指摘した。ネヘミヤには、信仰を土台にした判断力があった。
 同胞のユダヤ人に高い利息を付けて金を貸したり、借金が返せないときに畑を奪ったり、子供たちを奴隷として労働させることは聖書に照らして許されないと断じた。(→出エジプト22:25、申命記23:19)

2、実行力

 神だけを恐れ人を恐れないネヘミヤは、ユダヤ人の金持ちに行動をうながした。現状を変革するには行動が必要だ。ネヘミヤは、畑を返せ、利子を返せ、と富裕層に迫った。(9~11節)

 「私たちは神を恐れて歩むべきではないか。」(9節)

 力を出して城壁工事に協力する事は共に生きる道だ。持てる富を捨てることもまた共に生きる道でもある。失うことは、実は新たな価値を生む。
 ネヘミヤは、このようにして、損をする道を選ぶように有力者に勧めた。それが神の心であると説いた。犠牲を呼びかけることができる指導者、これもまたネヘミヤのリーダーたるゆえんだ。

 申命記15:1には「ヨベルの年」という負債免除制度が記されている。7年に一度、貧しい人々が再出発できるチャンスがあった。その年、借金がゼロになる。こうした神の考え方がネヘミヤの行動を後押ししているのだろう。

3、模範

 借金や利息を免除し、担保物権を返したり、奴隷を解放することは、経済的損失を意味したが、ネヘミヤは自らが、その先頭に立った。(10節)また、指導者としての生活でも、ネヘミヤはユダヤ総督としての給与を受け取らなかった。(14節)

 有力者らは、ネヘミヤの言葉を聞いたとき最初、沈黙した。(8節)その次には、ネヘミヤの言葉を受け入れ、「私たちは返します」(12節)と自分たちの権利を放棄し、利子や畑、奴隷を返した。最後には、神の前で今後の姿勢を誓い、アーメンと言って「主をほめたたえた」(13節)。内部分裂の危機が、主への賛美と姿を変えてみごとに解決した。

 UCLAの男子バスケットボールチームを全国で10回優勝させたジョン・ウッデン氏は、伝説的な監督だ。目先の勝利ではなく、人格教育を重んじ、選手が自分のベストを出せることを目標にかかげた。ウッデン監督は言う、失敗することはあるが、自分の過ちを人のせいにするまでは本当の失敗とはいえない、と。仲間のミスを責めることによってはチームに亀裂が生じるが、自分のベストに専念し、同僚のミスをカバーするような心は勝利を呼び込む。

 ネヘミヤは、危機を乗り越え、城壁完成へとまた一歩近づけた。

 私たちも以下のように神に求めよう。
正しく物事を見極める判断力を与えてください。
人を恐れず、神を恐れて行動できるように。
私自身が、まず模範になれるように。