城壁完成 ネヘミヤ6:1~19

 城壁完成まで、あとわずかと迫った。慌てたトビヤとサヌバラテは、最後の妨害工作に打って出た。最初彼らは、ネヘミヤを暗殺しようとした。

1、指導者に必要なのは、洞察力 

 サヌバラテらは、もっともらしい会見理由を持ち出し、会見場所を準備した。ネヘミヤは、暗殺計画だと見抜いて、応じなかった。ここに、洞察力が働いていることが分る。
 サヌバラテらは、開封の手紙を持って行かせた。その手紙には、ネヘミヤがアルタシャスタ王への反逆を画策しているとの虚偽の情報が書かれてあった。ネヘミヤは、こうした作戦に踊らされることはなかった。

 指導者に必要なのは、洞察力だ。問題の本質がどこにあるか、見抜く力が必要だ。罠や誘惑を見抜く力が不可欠だ。

 ネヘミヤは、神に祈った。「ああ、今、私を力づけてください。」(9節)

 祈りが、洞察力を与えてくれる。何か変だな、その理由が分らない、という時は、祈ることだ。祈りの中で大切なものが見えてくる。

 ジョン・ウェスレーの書斎が今も残っている。質素な机や祈りの場所が今も見ることができる。毎朝4時から祈った祈ったと言われているが、多くの人々を救いに導き、イギリスを変えた原動力は祈りにある。写真で見ただけでも、ウェスレーの熱い祈りが伝わってくる。私たちも祈ろう。洞察力を求めて。

2、指導者が持つべきものは、勇気

 暗殺計画が失敗すると、サヌバラテたちはネヘミヤが失脚するように画策した。買収された預言者シェマヤは、ネヘミヤに緊急事態を装って神殿に逃げ込むように声をかけた。親切そうな誘いだった。祭司しか入れない場所にネヘミヤが入れば、後にユダヤ人から批判の声が上がり、指導者失格になることを計算の上の策略だ。殺さなくても、失脚させれば、効果は同じだった。
 ネヘミヤは、こう言った。
 「私のような者が、逃げてよいものか。」(11節)

 ネヘミヤは、ぎりぎりの状況で、罠を見破り、踏みとどまった。
「わが神よ。……忘れないでください。」(14節)と神に祈った。

 ネヘミヤは、自分の名前が歴史に残ることを願わなかった。その代わり、神に覚えられることを願った。ここにネヘミヤの優れた視点がある。

 私が20年以上牧師をしながら多くのクリスチャンを見てきたが、信仰者にとって大切な要素は勇気だ。祝福されたクリスチャン生涯を送る人は、例外なく勇気を持っている。
 愛す勇気。止める勇気。あやまる勇気。始める勇気。主イエスを伝える勇気。信仰をあかしする勇気。正義を行う勇気。人を助ける勇気。
 あなたには勇気があるだろうか。「私のような者が、逃げてよいものか」

 日本で出会ったあるクリスチャン弁護士は、暴力団事務所の移転を求める住民訴訟を引き受けていた。自宅の前に警察官が警備のため立っているという。彼の周囲には静かな勇気が漂っていた。

 イギリスの偉大な政治家チャーチルは言っている。家財を失うのはわずかなことだ。名誉を失うことは多くを失うことだ。しかし、勇気を失うのはすべてを失うことだ。

3、神の栄光を仰ぎ見るために 

 本当の成功は、誰か個人がほめ称えられることではない。神の栄光がたたえられることだ。
 100年間放置されていた城壁がわずか52日で完成した。ネヘミヤの指導力が並外れていたことは明らかだ。しかし、完成したときネヘミヤへの賞賛の言葉など記録されていない。人々は以下のように認識した。

 「この工事が、私たちの神によってなされたことを知ったからである」(16節)

 そうです、私たちの神によって事は為るのです。神のために生きる人は、このように神の栄光を見ることができる。

 ある日本人クリスチャンは日本で電車に乗っていた時、酒に酔ったヤクザ2人が若い女性にからんでいる場面に出会った。誰も助けない。祈った。すると、智恵が与えられた。電車が駅に止まる直前に、弱い者いじめはやめろと大声を出した。注意が男性に向いたときに女性は駅を降りた。自分も降りた。ヤクザは後を追いかけようとしたが、ドアが丁度良く閉まった。
 
 あなたの番です。
問題の本質は何か、見極めるられるように、祈ろう
神に祈って、勇気をもらおう。
神だけに認めてもらえる生き方をしよう。

十分考えた上で ネヘミヤ5:1~19

 落胆していたエルサレムの人々にビジョンを与え、城壁建設プロジェクトを具体化して多くの人の協力を取り付けたネヘミヤは類まれなるリーダーである。敵の脅しにも屈することなく、片手に槍を持ち工事を継続、工事は順調に見えた。
 だが、次の難問は内側から噴出した。貧しい人々も建設工事に協力していたが、日銭が稼げず、生活に困窮してしまった。彼らの話によれば、借金の担保に畑を渡した者がおり、人によっては担保物権も底をつき、息子や娘を奴隷として人手に取られた者たちもいた。(1~5節)彼はは、問題の持っていき場所がなく、途方に暮れていた。
 ネヘミヤはこれを聞いて怒った。そして、十分に考えた上で行動に移した。

1、判断力

 ネヘミヤは、たとえ自分を支援してくれる有力者であっても、彼らを恐れずに批判した。(7~8節)自分を支持する金持ちを優遇するのが政治家の常だが、ネヘミヤは違う。金持ちで権力を持つ人々の問題点をはっきりと指摘した。ネヘミヤには、信仰を土台にした判断力があった。
 同胞のユダヤ人に高い利息を付けて金を貸したり、借金が返せないときに畑を奪ったり、子供たちを奴隷として労働させることは聖書に照らして許されないと断じた。(→出エジプト22:25、申命記23:19)

2、実行力

 神だけを恐れ人を恐れないネヘミヤは、ユダヤ人の金持ちに行動をうながした。現状を変革するには行動が必要だ。ネヘミヤは、畑を返せ、利子を返せ、と富裕層に迫った。(9~11節)

 「私たちは神を恐れて歩むべきではないか。」(9節)

 力を出して城壁工事に協力する事は共に生きる道だ。持てる富を捨てることもまた共に生きる道でもある。失うことは、実は新たな価値を生む。
 ネヘミヤは、このようにして、損をする道を選ぶように有力者に勧めた。それが神の心であると説いた。犠牲を呼びかけることができる指導者、これもまたネヘミヤのリーダーたるゆえんだ。

 申命記15:1には「ヨベルの年」という負債免除制度が記されている。7年に一度、貧しい人々が再出発できるチャンスがあった。その年、借金がゼロになる。こうした神の考え方がネヘミヤの行動を後押ししているのだろう。

3、模範

 借金や利息を免除し、担保物権を返したり、奴隷を解放することは、経済的損失を意味したが、ネヘミヤは自らが、その先頭に立った。(10節)また、指導者としての生活でも、ネヘミヤはユダヤ総督としての給与を受け取らなかった。(14節)

 有力者らは、ネヘミヤの言葉を聞いたとき最初、沈黙した。(8節)その次には、ネヘミヤの言葉を受け入れ、「私たちは返します」(12節)と自分たちの権利を放棄し、利子や畑、奴隷を返した。最後には、神の前で今後の姿勢を誓い、アーメンと言って「主をほめたたえた」(13節)。内部分裂の危機が、主への賛美と姿を変えてみごとに解決した。

 UCLAの男子バスケットボールチームを全国で10回優勝させたジョン・ウッデン氏は、伝説的な監督だ。目先の勝利ではなく、人格教育を重んじ、選手が自分のベストを出せることを目標にかかげた。ウッデン監督は言う、失敗することはあるが、自分の過ちを人のせいにするまでは本当の失敗とはいえない、と。仲間のミスを責めることによってはチームに亀裂が生じるが、自分のベストに専念し、同僚のミスをカバーするような心は勝利を呼び込む。

 ネヘミヤは、危機を乗り越え、城壁完成へとまた一歩近づけた。

 私たちも以下のように神に求めよう。
正しく物事を見極める判断力を与えてください。
人を恐れず、神を恐れて行動できるように。
私自身が、まず模範になれるように。

槍を手にして ネヘミヤ4:15~23

1、優先順位

 ネヘミヤは、何が最も大切な事か知っていた。揺るがない目的を持っていた。敵の悪口に振り回されても、悲観的な意見が沸き起こっても、微動だにしなかった。その目的を遂行するための優先順位をしっかりと持っていた。ここにネヘミヤの強さがある。
 人々は作業に戻った。リーダーが最も大切なもの逸れなければ、周囲の人々は落ち着いて為すべき事に集中できる。目標を掲げたら、達成するための優先順位をしっかりと堅持しよう。

「私たちの敵が、彼らのたくらみは私たちに悟られ、神がそれを打ちこわされたということを聞いたとき、私たちはみな、城壁に帰り、それぞれ自分の工事に戻った。」(15節)


2、ファイティング・スピリット

 敵の妨害を受けて以来ネヘミヤは、もしもの場合に備えて万全な対策を施した。片手に槍、片手で仕事という厳しい作業を人々に課した。「こんなに大変なら、もうやめよう」という弱気な発言はあったはずだ。けれどもネヘミヤは投げ出さなかった。彼は、戦う心を持っていた。ときに私たちは、この戦う心が必要なときがある。
 あなたの人生で、今が戦う時かもしれない。逃げるな。あわてるな。しっかり戦え。

 「城壁を築く者たち、荷をかついで運ぶ者たちは、片手で仕事をし、片手に投げ槍を堅く握っていた。」(17節)


3、神の戦い

 人々は、神のため、家族のため戦うと心に決めた。(14節)注意深くネヘミヤの言葉を読んでみよう。戦うのは私たちではなく、実は神ご自身なのだ。

 「どこででも、あなたがたが角笛の鳴るのを聞いたら、私たちのところに集まって来なさい。私たちの神が私たちのために戦ってくださるのだ。」(20節)
 
 あなたが戦う心を一旦持ったなら、神が先に立って進んでくださる。神が戦ってくださる。

 英語のことわざで以下のようなものがある。
<船は港にいる限り安全だ。けれども、船はそのために作られたのではない。>

 あなたは安全地帯に隠れるために造られたのではない。たとえ荒波であっても、そこを乗り越えて神の栄光のため、人々を愛すため、真の勝利を得るため、主と共に、戦おう。

 「あなたがたは、世にあっては患難があります。しかし、勇敢でありなさい。わたしはすでに世に勝ったのです。」(ヨハネ16:33)