詩篇69:1~36 泥沼に沈んでも


 絶望的な苦しみの中で賛美する。それが詩篇69篇です。

 69篇は主イエスの十字架の苦しみを予告した詩篇として知られ、新約聖書で引用されました。4節の「ゆえなく私を憎む」はヨハネ15:25で、9節の「あなたの家を思う熱心が私を食いつくし」はヨハネ2:17で、21節の「苦味を与え」はマタイ27:34で成就しています。
 私たちの苦悩は誰にも分ってもらないと詩篇69篇はうめきます。でも、主イエスはそれと同じ苦しみを体験するために生まれて下さったと詩篇69篇は予告しています。


1、苦しすぎる(1~12節)

 主よ助けてください。まるで、沼に落ちて水が喉元まで迫っている状態です。負けそうです。絶望的です。敵が多くて太刀打ちできません。敵は強すぎます。根拠がないのに悪口を言われ、笑われ、侮辱されています。その苦しみで胸が張り裂けそうです。

神よ。私を救ってください。水が、私ののどにまで、はいって来ましたから。
私は深い泥沼に沈み、足がかりもありません。
私は大水の底に陥り奔流が私を押し流しています。(詩篇69:1~2)

ゆえなく私を憎む者は私の髪の毛よりも多く、
私を滅ぼそうとする者、偽り者の私の敵は強いのです。
それで、私は盗まなかった物をも返さなければならないのですか。(4節)

私が、断食して、わが身を泣き悲しむと、それが私へのそしりとなりました。
私が荒布を自分の着物とすると、私は彼らの物笑いの種となりました。
門にすわる者たちは私のうわさ話をしています。
私は酔いどれの歌になりました。(10~12節)

 あなたは今、こんな状態にいますか。
苦し過ぎるなら、神に助けを祈りましょう。

ある朝、男性が奥さんの様子がおかしいのに気づきました。解離性健忘症という病気を持った彼女は、目の前の夫が見ず知らずの男性に見えていました。夫は、彼女の名前を教え、結婚指輪を確認させて昨年5月に結婚したことを話し、彼女の日記を読むように勧めました。彼にとっては3度目の経験なので、比較的落ち着いていました。妻は私を知らないし愛してもいない。でも、私は彼女をずっと愛してる。これからも彼女を愛すし忍耐深く彼女を支えるつもりです。

私たちは、試練に出会うと、神はいない、神は私を忘れていると言い放つことがあります。さきほどの男性のように、主も私たちを愛して下さったし、これからも愛してくれます。現実が辛いからと言って、神の愛が停止することはありません。
のどまで水が迫る苦悩の中でも、主に祈りましょう。助けを求めましょう。


2、誰にも理解されない(13~28節)

 助けてください。もう少しで死ぬところです。あなたのタイミングを見計らって救って下さい。いや、すぐに救って下さい。もう耐えられません。誰も私の苦しみを理解してくれません。むしろ、傷に塩を塗りこむ者がいます。だから、敵を滅ぼしてください、命の書から彼らの名前を消し去って下さい。

しかし主よ。この私は、あなたに祈ります。神よ。みこころの時に。
あなたの豊かな恵みにより、御救いのまことをもって、私に答えてください。
私を泥沼から救い出し、私が沈まないようにしてください。
私を憎む者ども、また大水の底から、
私が救い出されるようにしてください。(13~14節)

そしりが私の心を打ち砕き、私は、ひどく病んでいます。
私は同情者を待ち望みましたが、ひとりもいません。
慰める者を待ち望みましたが、見つけることはできませんでした。
彼らは私の食物の代わりに、苦味を与え、
私が渇いたときには酢を飲ませました。(20~21節)

どうか、彼らの咎に咎を加え、彼らをあなたの義の中に入れないでください。
彼らがいのちの書から消し去られ、正しい者と並べて、
書きしるされることがありませんように。(27~28節)

 あなたが助けを求めても、事態が好転しない時もあります。誰にも理解されずに孤独に陥ることがあります。
 孤独すぎます、限界です、誰も信頼できません、と叫ぶ相手がいるとしたら、その相手が最も信頼できる方なのです。その方が私たちの神です。神のまこと、神の恵み、神のあわれみに頼りましょう。

「感謝します」というプレイズソングをご存じですね。Dan Burgessによる原詩が素晴らしいのですが、奥山正夫による訳詞は原詩にない温かみを加えていて、日本人の琴線に触れる泣ける歌詞です。今日の詩篇69篇のテーマに通じる歌といえます。

感謝します 悲しみの時に 共に泣きたもう 主の愛を
感謝します こぼれる涙を ぬぐいたもう 主の憐れみを
しかし願う道が 閉ざされた時は 目の前が 暗くなりました
 どんな時でも あなたの約束を 忘れないものとしてください


3、未来が見えない(29~36節)

 自分の願う通りに問題が解決した時は感謝します。
 願う通りにならない時は、どうしたらいいですか。賛美するのです。

悩みと恥が消え去らない。理解者もいない。何の解決の糸口もない。首都エルサレムの将来は不透明です。そんな時、この詩篇では、神をほめたたえました。歌いました。
将来が見えない中での主への賛美は、最上の牛を犠牲として捧げること以上に尊い礼拝になります。神は、神である。その一点のゆえに、賛美に値します。弱い人や貧しい人は、きっと神の恵みを受けることでしょう。天と地よ、世界のすべてのものよ、主をほめよ。この方こそ、まことの神です。

私は神の御名を歌をもってほめたたえ、神を感謝をもってあがめます。
それは雄牛、角と割れたひずめのある若い雄牛にまさって主に喜ばれるでしょう。
心の貧しい人たちは、見て、喜べ。神を尋ね求める者たちよ。あなたがたの心を生かせ。
主は、貧しい者に耳を傾け、その捕われ人らをさげすみなさらないのだから。
天と地は、主をほめたたえよ。海とその中に動くすべてのものも。(30~34節)

 35節にシオンとあります。シオンはエルサレムですが、シオンを私と言い換えて祈ってみましょう。神が私を救い、私の家族、私の職場、私のコミュニテーを再建して下さる。あなたもそう信じませんか。賛美する者は、信じる者に変えられます。

まことに神がシオンを救い、ユダの町々を建てられる。
こうして彼らはそこに住み、そこを自分たちの所有とする。(35節)


 →あなたの番です
  □苦し過ぎるから、主に助けを求める
  □誰にも理解されないから、主に頼る
  □未来が見えないから、主をたたえる