御国を受け継ぐ(未来力) エペソ1:11~12

 今日は「未来力」について話しましょう。「未来力」とは、私が名付けたもので、信仰によって将来の祝福を信じる力のことです。

 「人生とは、後ろを振り返れば理解できるが、前向きに生きなければいけない」

 キルケゴールは上記のように含蓄のあること言いました。人は、しばしば過去を振り返ります。失敗、悲しみ、痛み、などを現在形で追体験する傾向があります。それは、自動車に乗り、ギアをリバースに入れ、体を反転させて後方を注視し、100マイルもバックを続けるようなものです。自動車は、前に走るためにできていて、後ろに戻るのは車庫入れぐらいです。
 人間も前に進むために造られました。神が、約束された将来の祝福をしっかりと見つめ、それを喜びとし、目当てとして前進しましょう。

1、私たちは後ろを向く、将来の祝福を知らないから

 さて、神が将来私たちにくださる祝福とは何でしょう。

 「私たちは彼にあって御国を受け継ぐ者ともなったのです。私たちは、みこころによりご計画のままをみな実現される方の目的に従って、このようにあらかじめ定められていたのです。」(エペソ1:11)

 11節には、ギリシア語でエレーローという言葉が使われていますが、翻訳聖書に訳のばらつきがあります。「神の民として選ばれた」(口語)、「約束された相続人とされた」(新共同訳)、「私たちは選ばれた」(NIV)、「私たちは相続財産を持っている」(NKJ)、堅実な訳で知られる新改訳は「私たちは彼にあって御国を受け継ぐ者ともなった」と大胆に訳しています。

 ギリシア語本文には、「御国」とは書いてありません。いずれにせよ、神が私たちを選び、私たちに特別な財産をくださるという点では一致があります。

 それにしても、私はエペソ1章を読みながら悔しくなります。パウロが見ているもの、パウロが確信しているものが、私には実感としてつかめないからです。
そういえば、アフリカの草原に住んでいる人の視力が6.0だという事を聞いたことがありますか。とんでもない視力です。見える人には見えているものです。
 音楽家は、一般人には分からない音のズレに気づきます。ピアノの調律の元になるA(ラ)の音が440ヘルツではなく442ヘルツになるだけで気分が悪くなるといいます。
パウロは、神が下さる祝福がどんなに素晴らしいかを知っていました。

 いままで、エペソ1章で、私たちの過去に関する神の祝福を見てきました。神が私たちを愛してくださったこと。選んでくださったこと。神の子としてくださったこと。罪を赦してくださったこと。同様に、神は、私たちの将来についても素晴らしいプレゼントを用意してくださっているのです。


2、神は後ろも前も知っている、祝福を喜んでおられるから

 次の文書は、1885年にバーネットが書いた小説「小公子」の冒頭部分です。
 「セドリックはなにも知らなかった。だれも教えてくれなかったからだ。パパがイギリス人だというのはママの話で知っていた。」

 主人公セドリックは、ニューヨークの裏町に生きる7歳の貧しい少年でした。亡くなった父がイギリス人だという事は聞いていましたが、祖父がドリンコート伯爵で、アメリカ人女性と結婚したことで勘当されたということは知りませんでした。莫大な資産が相続されることになったのです。私たちとセドリックは良く似ています。本当は、神の相続人なのに、まったく気づいていない。聖書を読んでもピンと来ないのです。

 飛行機でエコノミー席を買ったのに乗ってみたらビジネス・クラスに変更されていて、<天にも上る気持ち>という人もいるでしょう。航空会社の地上職員は、エコノミーが満席なので、誰をビジネスにしようか考えます。この人だと決めてしまっても、私たちは最初のうちは知らされません。私たちは今、そういう状態で待合室である地上に生きているのです。

 リビング・バイブルのように現代風に、また大胆に翻訳することで有名な「The Message」訳によると。11節は、「私たちは、自分が何者であるか、また、何のために生きているかを、キリストにあって見出すことができた。それは、私たちがキリストの事を聞く前から、神が私たちに目を向け、神のために生きるようにとすべてのことを働かせ、神の目的、神の栄光のために私たちが生きるようにとデザインして下さったからだ。」(私訳)となっています。

 神は、私たちが見たこともない聞いたこともない相続財産を私たちに用意しておられます。
 「まさしく、聖書に書いてあるとおりです。「目が見たことのないもの、耳が聞いたことのないもの、そして、人の心に思い浮かんだことのないもの。神を愛する者のために、神の備えてくださったものは、みなそうである。」(第1コリント2:9)

 永遠の昔から、神は私たちを祝福し、豊かな資産を与える決意をされたのです。私達に必要なのは、<未来力>=信仰によって将来の祝福を信じる力です。

 さあ、あなたの番です <未来力>を手に入れるには、
あなたの外に希望の土台を置くことです。
未来の祝福を信じる根拠をキリストに置くことです。
聖書の約束の言葉にとどまることです。

 そのように生きるとき、「それは、前からキリストに望みをおいていた私たちが、神の栄光をほめたたえる者となるためです。」(12節)と告白できるようになります。

 「さあ、私の父に祝福された人たち。世の初めから、あなたがたのために備えられた御国を受け継ぎなさい。」(マタイ25:34)