ルカ2:1~7 住民登録とクリスマス



 クリスマスは特別の日です。

1、主イエスは、歴史上の人物

そのころ、全世界の住民登録をせよという勅令が、皇帝アウグストから出た。これは、クレニオがシリヤの総督であったときの最初の住民登録であった。(ルカ2:1~2)

 センサス。それはアメリカの国勢調査の名称ですが、もともとはローマ帝国で行われた人口調査でした。ルカ2:1の英語の聖書を読むと、センサスが行われたと書いてあります。皇帝アウグストは住民登録を3回実施したことが知られており、ルカの記述は紀元前8年のセンサスの一環だと推測できます。こうした記述は、主イエスが歴史的な人物であったことを教えてくれます。
 
 聖書以外の文書にも主イエスについての記述があります。たとえば、1世紀のユダヤ人歴史家のヨセフスが書いた『ユダヤ古代誌』には次のような部分があります。

 「さてこのころ、イエスという賢人―実際に、彼を人と呼ぶことが許されるならばーが現れた。彼は奇跡を行う者であり、また、喜んで真理を受け入れる人たちの教師でもあった。」

 ローマの歴史家タキトゥスの紀元115年の記録には次のような文章があります。

 キリストなる者は、ティベリウスの治世下に、元首属吏ポンティウス・ピラトゥスによって処刑されていた。その当時は、この有害きわまりない迷信も一時しずまっていたのだが、最近になってふたたび、悪の発生地ユダヤのみならず、世界からおぞましい破廉恥なものがことごとく流れこんでもてはやされるこの都においてすら、猛威をふるっているのである。

 ユダヤ人が権威を置く『タルムード』には2世紀の『ミシュナ』が含まれており、主イエスについての記録もあります。もちろん批判的に書いてあります。イエスは魔術によって病気をいやし、奇跡を行った人物であり、イエスは教師であり、弟子を持った異端で詐欺師という内容です。不思議なことに、いやしや奇跡は否定できませんでした。

 神である方が人となられたクリスマスが、皇帝アウグストによる人口調査と時期が重なりました。それで、主イエスの歴史性が確認されます。ここに主の御手を見ることができます。


2、主イエスは、預言を成就した方

 それで、人々はみな、登録のために、それぞれ自分の町に向かって行った。ヨセフもガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。彼は、ダビデの家系であり血筋でもあったので、身重になっているいいなずけの妻マリヤもいっしょに登録するためであった。(3~5節)
 
 センサスには強制力がありました。日本風に言えば、戸籍上の本籍地で登録せよという命令です。それで、ヨセフは実家のあったベツレヘムへに臨月のマリアを連れて出かけました。二人の現住所はガリラヤのナザレだったので、直線距離でも70マイル離れていました。山また山の連続の道なので、二人は難儀したことでしょう。
 ヨセフたちが暮らしていたナザレは旧約聖書に登場しない小さな村でした。ジェームズ・ストレンジ博士によると、1世紀のナザレの人口は最大480人程度だったといいます。
 
 「ベツレヘム・エフラテよ。あなたはユダの氏族の中で最も小さいものだが、あなたのうちから、わたしのために、イスラエルの支配者になる者が出る。」(ミカ5:2)

 旧約の預言者ミカは、主イエス誕生の700年前に、救い主がベツレヘムで生まれると預言しており、主イエス誕生時の律法学者もこの預言をしっかりと把握していました。(マタイ2:4~6)ヨセフは、自分たちがベツレヘムに滞在している事実を、ローマ帝国の横暴と考えたかもしれません。けれども神の時計に狂いはなく、救い主が生まれると預言されていた場所でマリヤは男の子を出産することになったのです。

 主イエスは、旧約時代の預言者が予告したとおりにベツレヘムで生まれ、ダビデの子として生を受けたのです。

 ルイス・ラピディスはユダヤ人で、幼い頃からキリスト教を毛嫌いしていました。ルイスは、ベトナム戦争に参加し戦争の悲惨さを体験、以後は東洋宗教に引かれ、麻薬におぼれる生活になりました。カリフォルニアに戻った1969年、クリスチャンと議論し、「俺はユダヤ人なんだ。イエスなんか信じられるか」と反発すると、旧約聖書に救い主が預言されていることは知っているかと聞かれ、今まで聞いたことがないと答えると、聖書を調べてごらんと聖書を渡されて、その日から旧約聖書を読み始めました。すると、救い主についての預言を何か所も見つけました。救い主は、アブラハムの子孫、ダビデの子孫として生まれる。ベツレヘムで生まれる。救い主は裏切られ、偽証で告発される。手と足を刺されて死ぬ。朽ちることなく天に上げられる。イザヤ53章を読んだ時は体が震えるほどでした。53章に書かれている救い主はイエスのことだと気づき愕然としました。最終的には50箇所近くの救い主の預言箇所を見出し、その預言がことごとく主イエスに合致していることが分かりました。
 恐る恐る新約聖書を読みは始めると、マタイの系図に出会い、主イエスがアブラハムの子孫でダビデの子孫だと分かりました。処女がみごもるというイザヤの預言にも合致しています。ベツレヘムで生まれたことはミカの預言に適合しました。ルイスは、イエスが旧約聖書が預言したメシア、救い主だと納得し、信じました。すると麻薬から解放され、心が新しくされ、後にはカリフォルニア州で牧師になりました。

 主イエスは、旧約聖書が預言した救い主です。


3、主イエスは、救い主

ところが、彼らがそこにいる間に、マリヤは月が満ちて、男子の初子を産んだ。それで、布にくるんで、飼葉おけに寝かせた。宿屋には彼らのいる場所がなかったからである。(6~7節)

 住民登録のため、ベツレヘムの宿屋は満杯で、生まれたばかりの赤ちゃんを寝かせる場所は家畜のえさ箱しかありませんでした。えさ箱に赤ちゃんを寝かせるのは、当時でも、まれなことでした。それで、天使が羊飼いに教えた救い主の目印は、飼葉おけにねている赤ちゃんでした。飼葉おけに寝かせられた主イエスは、人々に追いやられた姿に見えました。

 「きょうダビデの町で、あなたがたのために、救い主がお生まれになりました。この方こそ主キリストです。あなたがたは、布にくるまって飼葉おけに寝ておられるみどりごを見つけます。これが、あなたがたのためのしるしです。」(11~12節)

 クリスマスは救い主イエスの誕生した日です。ベツレヘムで生まれ、飼葉おけに寝かされたこの赤ちゃんは成長し、やがて十字架にかかって私たちの罪を赦してくださる方となります。

 主イエスは、理想化された架空の人物ではなく、歴史上実在された方です。旧約聖書に預言されたとおりベツレヘムで生まれた方です。天使が知らせた救い主の目印が指し示すように、主イエスはまことの救い主です。

 今から50年も前の事です。ある家庭でクリスマスの朝、幼い男の子が大喜びで玄関から戻りました。「サンタさんに、ミニカーのセットをもらった」というのです。日本全体が貧しい時代で、夫婦には子供のおもちゃを買う財力もありませんでした。誰がプレゼントをくれたのかを調べてみると、新聞配達の大学生だと分かりました。新聞受けに、手紙が入っていて、「サンタさん、ミニカーセットを下さい。このうちです」と書いてあったというのです。

 世界の人々は皆、心の新聞受けにメモを入れ、「神さま私を助けて下さい。」と救いを求めているように私には思えます。一番親しい人を愛したいのに愛せません。赦したいのにゆるせません。悪い道を離れたいのにできません。自分で自分を救えません。私を助けて下さい。「このうちです。」と救い主を求めているはずです。

 クリスマスは、暗い世界に生きる私たちに希望を与える輝かしい日です。あなたの罪は主イエスによって完全に赦されます。まだ主イエスを信じていない人は、今日。主イエスを心にお迎えしましょう。すでに主イエスを信じている人は、心を込めて主を賛美し、「このうちです」と助けを求めている人の所に福音を届けましょう。


 →あなたの番です
 □主イエスは歴史上の人物です
 □主イエスは、預言者が予告したとおりベツレヘムで生まれました
 □飼葉おけは救い主の印です