使徒16:1~3 送り出す教会 ―育てるー



  送り出す教会シリーズ2015、2回目は「育てる」です。

 クリスチャンは何のために存在していますか。
 それは、誰かを育てるためです。

 もちろん、クリスチャンがこの世に存在する目的は他にもありますが、今日は上記のテーマに沿って考えましょう。
「それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。」(マタイ28:19)と主イエスは命じました。あらゆる国に伝えなさいで終わっていません。弟子を作りなさい、つまり、誰かを育てなさいと命じているのです。主イエスが十二弟子にフォーカスしたことを考えるならば、弟子を育てることがどんなに大事か分かります。



1、テモテを育てたパウロ

それからパウロはデルベに、次いでルステラに行った。そこにテモテという弟子がいた。信者であるユダヤ婦人の子で、ギリシヤ人を父としていたが、ルステラとイコニオムとの兄弟たちの間で評判の良い人であった。パウロは、このテモテを連れて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシヤ人であることを、みなが知っていたからである。(使徒16:1~3)

紀元50年前後のことです。パウロは第2回伝道旅行に出かけ、現在のトルコ南部に位置する、ルステラという町に滞在しました。この町は、ローマ帝国による殖民都市のひとつと言われているので、少数のローマ市民(おそらく退役軍人)と教養のあるギリシア人が指導的立場を取り、ルカオニヤ語しか話せない一般庶民が多数を占めていたと思われます。

テモテは、父親からギリシア語と一般教養を学んでいたことでしょう。また、ユダヤ人の母ユニケから旧約聖書を学び、信じる心を教えられていました。(第2テモテ1:5、3:15)
パウロが第1回伝道旅行でユダヤ人に殺されかけたルステラに住んでいたテモテは、「ルステラとイコニオムとの兄弟たちの間で評判の良い人」(使徒16:2)となっていました。テモテの熱心な信仰姿勢が、こうした背景からも想像できます。

実は、第2回伝道旅行に出発する前、パウロは苦い経験をしています。(使徒15:36~41)第1回伝道旅行の途中で逃げ帰ったマルコを連れて行くことをパウロは反対し、恩人・メンター・盟友であるバルナバと喧嘩別れをしてしまったのです。この時のパウロは、マルコを育てる発想を持ち合わせていませんでした。

バルナバという偉大なメンターを失って、パウロは大きな喪失感を覚えたことでしょう。アンテオケ教会で1年間、伝道旅行で1年間、パウロはバルナバから多くを学びました。そんな頃なのです。パウロがテモテの存在に気づいたのは。
余談となりまずが、この後、彼らはピリピに立ち寄りますが、そこでパウロとシラスは投獄されますが、テモテは除外されました。客観的に見ても、テモテはまだ若造だったのです。

この後、パウロは自分が死ぬまでの約14年間、テモテを育て続けました。マルコを許せなかったパウロでしたが、第2テモテの手紙では、弱さや臆病心に負けたテモテ(第2テモテ1:6~8)を切り捨てずに励ましています。テモテは、OJTオン・ザ・ジョブトレーニング)の形でパウロから多くを習得していきました。

「それゆえ、あなたがたは行って、あらゆる国の人々を弟子としなさい。」(マタイ28:19)



2、私が誰かを育てる

P&Gは、世界的に有名な企業で、フォーチュン誌の調査によると社員の能力が世界1位と認められたことがあります。マネージャークラスの評価は、仕事や利益面で50%、部下を育てた功績が50%の査定を受けるといいます。本気で人材教育に力を入れているのですね。

あなたは、今、誰を育てていますか。誰を育てようと思いますか。
何を教えますか。どのように育てますか。

信仰告白したクリスチャンを育てる時の大事なポイントが二つあります。
①信仰の確信を持つこと(救いを頭と心できちんと理解する)
  ②信仰生活の基本を身に着ける(新しい行動スタイルを体得する)

 どのように育てるのでしょう。育てるために必須条件は次の3つです。
  ①顔を合わせて定期的に会う
  ②聖書を共に学ぶ
  ③何かを共に行う

 その人と会い、聖書を学び、語り合い、祈り合い、何かを共にします。それを定期的に続けると、人は育ちます。あなたが先輩のクリスチャンなら、あなたが育てる人に何が足りないのかが分かります。ディボーションを毎日できる人に育てましょう。優先順位を判断できるように励ましてあげましょう。
 あなたが体得したすべてを伝えれば良いのです。あなたが育てた人が、次の人を育てることができるように育てるのです。

 私は高校3年の7月に信仰告白し、翌年の4月、大学生になるとすぐ、教会の高校生クラスのスタッフになり、教える立場になりました。それが私にとって、本当に良かったのです。教えることにより、自分が最も学びました。ディボーションや生活態度や普段の意識もおのずと変化しました。

 教育学の世界で、Three Person Teachingという考え方があります。何かを聞いて、ふーんと終わるならすぐに忘れます。教える人、聞いた人、聞いた人から教わった人という3 Personが成立する流れを作ることが、最も効果的な学習方法になります。自分をその流れの真ん中の位置に置き、聞いた事を次に伝える姿勢を持つと吸収力がぜんぜん違います。教える人が一番学ぶのです。育てる人は苦労と涙と葛藤を経験しますが、育てた人だけにしか見えない景色を見ることになります。

 「多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい。」(第2テモテ2:2)

 この聖句ではなんと4 Personが意識されています。パウロ→テモテ→教える力のある忠実な人→その人から学ぶ人。

 さあ、あなたが育てる人になりましょう。
・親なら子供に教えましょう。
・あなたがメンターになって人を育てましょう。
・日曜学校の先生になりましょう。
・中学生や高校生を教えましょう。
・同じ年齢の主婦を集めてスモールグループを作りましょう。
・教会のミニストリーを立ち上げ、仲間を集めましょう。
・家庭集会を始めましょう。
・学生伝道のために家庭を開放しましょう。
・帰国する人のために学習会をしましょう。
・自分自身が教会のバイブルスタディーや祈祷会や男性集会に参加しましょう。
・自分自身がメンターから学びましょう。

 学生時代、教室で学んだことは、ほとんど忘れています。でも、あなたの身近にいた先輩から学んだことは忘れないものです。親身になって先輩が教えてくれたこと、見せてくれた後姿、あなたのために飛んで来てくれたこと、涙を流して一緒に祈ってくれたこと、主に対する熱い思い、これらの事があなたを育ててくれたはずです。信仰の先輩たちは、彼らの時間や思いや命さえ削ってあなたを育ててくれたはずです。今度は、私たちの番です。育てる人になりましょう。

「パウロは、このテモテを連れて行きたかった」(使徒16:3)

→あなたの番です。
□あなたが育てるテモテは誰ですか。
□教える人が最も多く学びます。
□そのために、祈って第一歩を踏み出しましょう。