詩篇58:1~11  正義を!


 世の中には、本当の悪党がいます。
 日本のお年寄りなどを狙う特殊詐欺の被害総額は、2015年が29億円です。これは、毎月の被害額で、年間では350億円にのぼります。長年貯めてきた老後の大切なお金を奪う行為は言語道断、人間以下です。世界には大悪党がいます。平気で人を殺す独裁者、人を奴隷して売りさばく悪党、貧しい人々から搾取する企業。
 ダビデは詩篇58篇で、こうした悪人の問題を取り上げました。


1、力ある者よ

力ある者よ。
ほんとうに、おまえたちは義を語り、人の子らを公正にさばくのか。
いや、心では不正を働き、地上では、
おまえたちの手の暴虐を、はびこらせている。(詩篇58:1~2)

 ダビデは権力者に語りかけ糾弾しています。あなたは口では正義や正論を述べて人気を取ろうとしているが、その実態は逆だ。あなたが不正を働き、暴虐をはびこらせる張本人だ。あなたの動機は、権力欲と己の快楽と利益の追求だ。
 権力者よ!あなたは、コブラのような存在だ。あなたは、その毒で多くの人々を殺害し苦しめている。耳をふさいで誰の忠告も聞かない独裁者だ。(3~5節)


2、祈り

神よ。彼らの歯を、その口の中で折ってください。
主よ。若獅子のきばを、打ち砕いてください。
彼らを、流れて行く水のように消え去らせてください。
彼が矢を放つときは、それを折れた矢のようにしてください。
彼らを、溶けて、消えていくかたつむりのように、
また、日の目を見ない、死産の子のようにしてください。(6~8節)

 ダビデは、暴虐を行う権力者を見たとき神に祈りました。神よ、暴虐を行う指導者たちの牙を打ち砕き、その力を無力化してください。権力を持つ悪者を消し去って下さい。塩をふりかけられたかたつむりのように、みじめな形で根絶やしにして下さい。

 ダビデの祈りは正直な祈りでした。もし、あなたの周囲に本物の悪党がいて、あなたを苦しめているなら、ダビデの祈りはきっと参考になるでしょう。


3、さばき

おまえたちの釜が、いばらの火を感じる前に、
神は、生のものも、燃えているものも、ひとしくつむじ風で吹き払われる。
正しい者は、復讐を見て喜び、その足を、悪者の血で洗おう。(9~10節)

 悪い権力者にどう立ち向かったらよいのでしょう。武力で対抗すればよいのでしょうか。いいえ、それは間違っています。復讐してはいけません。復讐は暴力の連鎖を生みます。悪者と同じレベルに陥ります。神に悪者の処罰をゆだね、神の正義が成し遂げられる日を待ち望みましょう。神に信頼する正しい者は、神が悪者を吹き飛ばして下さる姿を見ることになります。

相模原の知的障がい者施設で大量殺人を行った男がいました。かつてヒトラーは知的障がい者を生きる価値なしと断じて約20万人をガス室で殺害しました。
知的障がい者施設の所長であったボーデルシュヴィング牧師は、収容者をヒトラーの手から助けると決心しました。その戦術はのらりくらり戦術でした。名簿の提出を政府から命じられると、徹底的に作業を遅らせました。政府の役人に何度も命じられても、態度を変えず、結果的には3000人の収容者を救うことができました。こうした生き方は私たちを勇気づけてくれます。

職場で悪質ないじめを受けた人がいました。苦しくて、辛くて、主に祈りました。ある日、職場に行くと、その人の姿がありません。解雇されたと知らされました。神のなさることは予想を超えています。

こうして人々は言おう。
「まことに、正しい者には報いがある。
まことに、さばく神が、地におられる。」(11節)

私たちにも、このような告白ができる日が来ます。正しい者には報いがあります。さばく神がこの地上におられると実感できる日がきます。

斎藤宗二郎(1877-1968)は岩手県花巻市の小学校の教師をしていたクリスチャンです。内村鑑三の影響を受け、日露戦争に反対したことなどから公職を追われました。
彼は新聞配達業を始め、一日40キロほどの道を歩いたり走ったりして新聞を配りました。配達しながら、その家の祝福を祈りました。迫害されても、神のさばきに任せました。彼の長女は学校でいじめられ、9才の時に友達から受けた暴行により腹膜炎になって死亡しました。それでも、斎藤は復讐せずに、人々の幸せを祈り新聞を配りました。子供に出会うとお菓子をあげ、物乞いがいれば小銭を与え、病人がいれば看病し、大雪が降れば学校への道を除雪し、春夏秋冬一年を通じて人々に仕えました。やがて、「名物買うなら花巻おこし、新聞取るなら斎藤先生」と言われるまでになりました。
49歳の斎藤が内村鑑三に呼ばれて東京に転居する日、駅のホームは大勢の人であふれました。一般の人々、町長はじめ有力者、教え子、物乞い、仏教の僧侶まで別れを惜しんだといいます。宮沢賢治は斎藤と同郷で19歳下、斎藤とも交流のあった仏教者でした。斎藤が去った5年後、賢治は病床で手帳に「雨ニモマケズ」の詩を書き、絶筆となりました。斎藤の生き方が賢治の心に残っていたのかもしれません。

 地上には悪人がいますが、正しく裁く神もおられ、その神を信頼して誠実に歩む人もいます。あなたは、どんな生き方をしますか。

 「まことに、さばく神が、地におられる。」

 →あなたの番です
  □悪者のために祈りましょう
  □復讐せず、神の正義を待ち望みましょう 
  □私にできることをしましょう