詩篇61:1~8節  心が衰える時


 「♪しあわせの扉は狭い、だからしゃがんで通るのね」水前寺清子のヒット曲365歩のマーチの二番の歌詞は、なんだか聖書的です。謙虚で誠実で、追い詰められても使命を全うしようと努力したダビデの歩みに通じます。

1、追い詰められたダビデ

神よ。私の叫びを聞き、私の祈りを心に留めてください。
私の心が衰え果てるとき、私は地の果てから、あなたに呼ばわります。
どうか、私の及びがたいほど高い岩の上に、私を導いてください。
まことに、あなたは私の避け所、敵に対して強いやぐらです。
私は、あなたの幕屋に、いつまでも住み、御翼の陰に、身を避けたいのです。
(詩篇61:1~4)

 「心が衰え果てるとき」、「地の果てから」という言葉を見ると、ダビデが窮地に追い詰められ、かなり困っている様子が分かります。
 この時ダビデは神に不平を言っていません。神の助けを求めて祈りました。敵の攻撃にさらされて行き場を失っていたので、私を高い岩の上へと導いて下さい、私のやぐらになって下さい、御翼の陰に入れて下さいと祈りました。

 1992年、スコットランドの病院で腰や膝の手術を受けた人60人を対象にある研究が行われました。その中高年の人達は、痛みを伴うリハビリをしないと歩行が難しくなります。研究者は、ノートを手渡して、毎週目標を書いてリハビリを行うように指示しました。痛みを我慢して、道の角まで歩いて、と具体的に目標を書いた人は、書かなかった人の2倍早く歩けるようになりました。ノートに書くことが回復を早めるきっかけになりました。
 ダビデは、苦難の中で祈り、詩篇を作り、心のノートに書き記していました。その行為自体がダビデに力を与えていました。
 あなたも、詩篇を作りませんか。あなたのノートに、あなたの希望を書きませんか。


2、王としての使命

まことに、神よ。あなたは私の誓いを聞き入れ、
御名を恐れる者の受け継ぐ地を私に下さいました。
どうか王のいのちを延ばし、その齢を代々に至らせてください。
彼が、神の御前で、いつまでも王座に着いているようにしてください。
恵みとまこととを彼に授け、彼を保つようにしてください。
こうして、私は、あなたの御名を、とこしえまでもほめ歌い、
私の誓いを日ごとに果たしましょう。(5~8節)

 子供の遊びを見ていると面白いことに気づきます。「It’s not fare」と誰かが叫びます。不思議なことに、この言葉を一番頻繁に使う子供が一番自己中心です。周囲の子供や遊びのルールそのものが気に入らなくなるのです。わがままな子は、「ずるいよ!」と叫んで遊びそのものを放棄し、結局みんなも遊びを継続できなくなります。大人も同じことをします。悪いのは自分以外で、あいつらのせいで不幸になったと周囲を憎みます。
ダビデは、不平を一つも言っていません。61篇は、ダビデの王位が脅かされた時の詩篇です。ひどい目に遭って、地の果てにまで追い詰められたと感じる時でも、ダビデは敵の横暴、敵の邪悪さに意識を向けるという水平視点ではなく、ダビデの眼は神との垂直関係に向けられています。ここにダビデの強さがあります。

イスラエルの国土は神が与えて下さった「受け継ぐ地」であり、ダビデはその国土を守る王として任命された。こういう垂直方向でダビデは物事を考えていました。

 「わたしはあなたを、羊の群れを追う牧場から取り、わたしの民イスラエルの君主とした。」(第2サムエル7:8)
 「わたしはその王国の王座をとこしえまでも堅く立てる。」(第2サムエル7:13)

 ダビデは、羊飼いであった自分が神に選ばれことを忘れません。神に選ばれ、神から使命を頂いて国王となった。今は劣勢かもしれないが、神の国土を守りたい、この身をもって神の栄光を表したいという思いのゆえに、詩篇61篇後半の祈りをしたのです。

 2005年、UCバークレー、ブラウン大学、国立衛生研究所が共同でアルコール依存者についての研究をしました。比較的長く断酒ができたのに、死別や離婚や大きなストレスを感じると酒に戻ってしまうアルコール依存者が多いのです。厳しいストレスを受けても断酒を続けられる人がいることに気づき、彼らに共通する特徴は何かと調べました。結局、ストレスでも酒に戻らない人達は、神を信じている人だと分かりました。研究者の正式な報告では、信じる力が彼らを支えたという文言になっています。神が彼らの祈りを聞き、アルコール依存者を守り励まし支えてくれたのだと私は思います。


 あなた自身を振り返って下さい。
今日、心が衰えていますか。神を遠く感じますか。そんな時こそ、神に祈りましょう。神はあなたの祈りを聞き取ってくれます。敵の手が届かないほど高い岩の上に主は引き上げてくださいます。
 あなたも羊飼いから国王に抜擢された者です。選ばれて、あなただけの使命を与えられた者です。そのあなたが危機に瀕したならば、主はあなたを助け出して、その使命が全うできるように助けて下さいます。

「神よ。私の叫びを聞き、私の祈りを心に留めてください。
私の心が衰え果てるとき、私は地の果てから、あなたに呼ばわります。
どうか、私の及びがたいほど高い岩の上に、私を導いてください。」


 →あなたの番です
  □心が衰えた時こそ、神に叫ぼう
  □窮地に陥ったとき、神の助けを信じよう