テモテへの手紙第一、第二、テトスへの手紙


 テモテへの手紙第一、第二、テトスへの手紙は、各教会に宛てたパウロの手紙と性格が異なります。先輩牧師であるパウロが、若い牧師を励ますために書いたもので、教会運営上の具体的アドバイスが多く含まれています。

 これら3つの手紙のエッセンスを生かせば、子育て、職場での後輩指導、信仰上の弟子訓練に応用できます。


1、主のあわれみを受け取る

信仰による真実のわが子テモテへ。父なる神と私たちの主なるキリスト・イエスから、恵みとあわれみと平安とがありますように。(第一テモテ1:2)

 パウロは、手紙の最初にいつも「恵みと平安」を祈りました。テモテに宛てた手紙だけに「あわれみ」を加えて「恵みとあわれみと平安」があるようにと祈りました。
 主イエスからあわれみを受けることなしに、牧師は続けられない。パウロは、まず自分の過去に触れて、どんなに大きな主のあわれみを受けたかを語りました。

私は以前は、神をけがす者、迫害する者、暴力をふるう者でした。それでも、信じていないときに知らないでしたことなので、あわれみを受けたのです。私たちの主の、この恵みは、キリスト・イエスにある信仰と愛とともに、ますます満ちあふれるようになりました。「キリスト・イエスは、罪人を救うためにこの世に来られた。」ということばは、まことであり、そのまま受け入れるに値するものです。私はその罪人のかしらです。しかし、そのような私があわれみを受けたのは、イエス・キリストが、今後彼を信じて永遠のいのちを得ようとしている人々の見本にしようと、まず私に対してこの上ない寛容を示してくださったからです。(第一テモテ1:13~16)

先輩、親、上司、という立場の人は、立派な今の姿だけを見せるのではなく、失敗と未熟さがあった若き日を後輩に語ることが大切です。主からあわれみを受けたという経験談が若い人達に大きな励ましになります。
かくいう私も、神学校の1年生の時、寮を逃げ出したことがありました。自分の能力の限界と信仰の未熟さに失望して、いわば自主退校をしました。バック一つ持って部屋を出て、アルバイトニュースを買い求めました。大学の聖書研究会の部屋に泊まりましたが、その深夜に主のあわれみに気づき翌日学校に戻りました。私は、主のあわれみを受けて30年以上牧師として歩むことができましたが、あの日のことは忘れません。

私は、あなたの涙を覚えているので、あなたに会って、喜びに満たされたいと願っています。私はあなたの純粋な信仰を思い起こしています。そのような信仰は、最初あなたの祖母ロイスと、あなたの母ユニケのうちに宿ったものですが、それがあなたのうちにも宿っていることを、私は確信しています。それですから、私はあなたに注意したいのです。私の按手をもってあなたのうちに与えられた神の賜物を、再び燃え立たせてください。神が私たちに与えてくださったものは、おくびょうの霊ではなく、力と愛と慎みとの霊です。(第二テモテ1:4~7)

テモテへの手紙第二にも、あわれみが書かれています。テモテよ、私はあの時のあなたの涙を覚えているよ。弱い時もある、臆病になる時もあるけれど、主のあわれみは注がれている、主から受けたものを思い出せ、必ず立ち上がれるよ、とパウロはテモテを励ましました。

 人を育てる者は、主からのあわれみを体験していることが必須です。


2、信頼できる人に任せる

ですから、監督はこういう人でなければなりません。すなわち、非難されるところがなく、ひとりの妻の夫であり、自分を制し、慎み深く、品位があり、よくもてなし、教える能力があり、酒飲みでなく、暴力をふるわず、温和で、争わず、金銭に無欲で、自分の家庭をよく治め、十分な威厳をもって子どもを従わせている人です。――自分自身の家庭を治めることを知らない人が、どうして神の教会の世話をすることができるでしょう。――また、信者になったばかりの人であってはいけません。高慢になって、悪魔と同じさばきを受けることにならないためです。また、教会外の人々にも評判の良い人でなければいけません。そしりを受け、悪魔のわなに陥らないためです。(第一テモテ3:2~7)

テモテへの手紙第一の時点では、テモテはエペソで牧師をしていました。また、テトスが手紙を受け取った時、テトスは地中海のクレテ島で牧師をしていました。二人とも若い牧師ですが、パウロに代わって各地を巡回していました。パウロは二人に対して、町ごとに教会の牧師を任命するようにと指示しました。上記の聖書箇所は、牧師の資質リストです。テトス1:5~9のリストも基本的には同じものです。牧師の資質を簡単に言うと、信頼できる人で、教える能力のある人です。

 パウロが第二の手紙でテモテを鼓舞している以下の部分でも、同じ事を言っています。他の人に教えることのできる人で忠実な人に弟子訓練をゆだねるように勧めています。

そこで、わが子よ。キリスト・イエスにある恵みによって強くなりなさい。多くの証人の前で私から聞いたことを、他の人にも教える力のある忠実な人たちにゆだねなさい。(第二テモテ2:1~2)

 主イエスは十二弟子を①選び、②育て、③任せました。パウロも、教会のリーダーたちに対して、常に次世代のリーダーを選び、任せるよう命じました。

 あなたの周囲に、クリスチャンとして信頼できる人がいますか。その人は教える力を持ていますか。その人を選び、育て、任せましょう。

 弟子作りの原則は、子育てにも、後輩育成にも応用できます。


3、自分自身も向上に努める

 パウロはテモテ第二の手紙を書く時点で、死期の近いことを悟っていました。(第二テモテ4:6~8)事実、この手紙はパウロの絶筆となりました。
 テモテよ、若くても軽くみられるな、信徒の模範となれ、教える事と自分の生き方を分離するな、一貫性のある信仰生活を送れとパウロはいつも語っていました。弟子を育てるあなた自身が、主の弟子であり続けなさいと教えました。

「キリスト・イエスのりっぱな兵士として、私と苦しみをともにしてください」(第二テモテ2:3)
 「熟練した者、すなわち、真理のみことばをまっすぐに説き明かす、恥じることのない働き人として、自分を神にささげるよう、努め励みなさい。」(2:15)
「若い時の情欲を避け、きよい心で主を呼び求める人たちとともに、義と信仰と愛と平和を追い求めなさい。」(2:22)
「みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。」(4:2)

あなたも、クリスチャンとして一貫性を持ちましょう。教会でも、家庭でも、職場でも、嘘がなく、誠実で、親切で、主イエスを愛す人として生きましょう。周囲の人に信頼される人になりましょう。神の栄光をあらわし、主イエスの福音を生涯語り続けましょう。
 人間ですから、罪を犯したり、失敗することもあります。大事なことは、悔い改め、主のあわれみを受けて立ち上がり、クリスチャンとしての一貫性を再構築することです。
 そのためにも、毎朝祈りましょう、毎朝聖書を読む人になりましょう。ありがとう、ごめんなさい、愛してます、私がします、と言える人になりましょう。


 →あなたの番です
  □主のあわれみを受け取りましょう
  □弟子を育てる弟子になりましょう
  □クリスチャンとしての一貫性を保ちましょう