マタイ2:13~23 夜のうちに


1、逃げる

彼らが帰って行ったとき、見よ、主の使いが夢でヨセフに現われて言った。「立って、幼子とその母を連れ、エジプトへ逃げなさい。そして、私が知らせるまで、そこにいなさい。ヘロデがこの幼子を捜し出して殺そうとしています。」そこで、ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに立ちのき、ヘロデが死ぬまでそこにいた。これは、主が預言者を通して、「わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した。」と言われた事が成就するためであった。(マタイ2:13~15)

マタイ1:20を見てください。ヨセフが夢の中で主の使いの言葉を聞くのは今回が始めてではありません。婚約者マリヤの妊娠で悩んだ時に、それは聖霊による妊娠であり、救い主の誕生なのだと主の使いが教えてくれました。
東方の博士が帰った後、ヨセフは夢を見ました。主の使いは、エジプトに逃げなさいと指示しました。理由は、ヘロデ王が殺そうとしているということでした。

ヨセフの行動は敏速でした。ヘロデの兵隊が明日来るかもしれない。夜、動いた方が人目につかない。夜のうちにマリヤも赤ちゃんも連れてベツレヘムを去りました。博士たちからもらった宝物はエジプト滞在費になりました。

 逃げる。それは立派な選択肢です。

 学校でいじめられたり行き詰ったら、転校しましょう。
会社の職場環境が劣悪なら、良い仕事を探して、転職しましょう。
疲れきったり、燃え尽きたら、リタイヤしましょう。
近所とのトラブルで苦しむなら引越しましょう。
借金解決の最終手段として自己破産もあります。お金のために死ぬことはありません。
 暴力亭主、アルコール依存の夫に殺されそうなら、逃げましょう。
 アメリカでダメなら、日本に帰ってやり直しましょう。

逃げることは敗北ではなく、人生を立て直す道です。家族を立て直すための勇気ある決断です。立ち向かえない強敵ならば、戦わずに去りましょう。
逃げてもよいのです。



2、歴史上の事実

その後、ヘロデは、博士たちにだまされたことがわかると、非常におこって、人をやって、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた。その年令は博士たちから突き止めておいた時間から割り出したのである。そのとき、預言者エレミヤを通して言われた事が成就した。「ラマで声がする。泣き、そして嘆き叫ぶ声。ラケルがその子らのために泣いている。ラケルは慰められることを拒んだ。子らがもういないからだ。」(マタイ2:16~18)

 ヘロデ王は巨大な建造物をいくつも作った権力のある王でした。同時に猜疑心の強い人物で、息子のうち3人を殺し、妻を殺し、義理の母を殺し、家臣たちを殺害した人物でした。新しい王として生まれた赤ちゃんの所在がつかめないので、ヘロデはベツレヘムで生まれた赤ちゃんを皆殺しにしました。

 預言者エレミヤは約600年前、ラマという町に人々が集められバビロン捕囚として連れて行かれる様子を、エレミヤ書31:15に記録しました。バビロン捕囚とは、つまり奴隷になるということです。ラマはベツレヘム近郊の町でした。
そのずっと昔、ヤコブの妻ラケルはこのベツレヘムに埋葬されました。ラケルは二人目の子供ベニヤミンを生んで直ぐに死亡しました。ベツレヘムにはラケルの涙も染み込んでいたのです。そして今、ベツレヘムで赤ちゃんを失った多くのお母さんたちの涙が流れました。預言者エレミヤは、未来を知らないままこの悲惨な出来事を予告していたのです。聖書が神の言葉といわれる理由の一つは、こうした預言の成就にあります。

ベツレヘムの赤ちゃん虐殺事件をマタイが記録したのは理由は二つあります。第一は、エレミヤの預言が成就したことです。第二は、博士がヘロデを訪ねた事が歴史的事実だということを指摘したかったのです。博士たちがヘロデ王に面会したからこの虐殺が起きたのです。

聖書が道徳や哲学の書と考える人がいますが、聖書はまず第一に歴史的な記録であることを忘れないでください。道徳、ことわざ、教訓、知恵は役にたちますが、人を罪から救うことはできません。主イエスは、歴史的に実在したお方で、実際に十字架で死に、よみがえってくださった方です。そこにキリスト教の独自性があります。



3、帰る

ヘロデが死ぬと、見よ、主の使いが、夢でエジプトにいるヨセフに現われて、言った。「立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地に行きなさい。幼子のいのちをつけねらっていた人たちは死にました。」そこで、彼は立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地にはいった。しかし、アケラオが父ヘロデに代わってユダヤを治めていると聞いたので、そこに行ってとどまることを恐れた。そして、夢で戒めを受けたので、ガリラヤ地方に立ちのいた。そして、ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちを通して「この方はナザレ人と呼ばれる。」と言われた事が成就するためであった。(マタイ2:19~23)

 ヘロデは紀元前4年に亡くなりました。
3度目になりますが、主の使いが夢に現れてヘロデの死を告げ、エジプトを離れるように命じました。ヨセフはそれに従いました。さらに、主の使いは4度目に現れ、ヘロデ王の息子アケラオが支配するユダヤ地域を避け、北部に住むように命じました。それで、北部の田舎町ナザレで生活することになりました。

 主イエスの母マリヤの信仰が素晴らしい事は良く知られています。神への従順、神に不可能はないと理解する心、忍耐などがマリヤの素晴らしい点です。今回、夫ヨセフの行動を見て、彼もまた立派な信仰者だと思いました。

 「立って」という言葉を主の使いは用いました。ヨセフは慣れ親しんだ環境に留まりたかったでしょう。でも、そこを出よとプッシュする意味で「立って」と強調しました。今度は、帰れとの命令です。それは、使命達成のためでした。救い主は、エジプトにいては何もできないのです。

あなたは、主から、帰れと言われているかもしれません。あなたが使命を果たすのは今いる場所ではなく、ホームです。故国に、故郷に、本来いるべき所に帰りましょう。

 「ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに立ちのき、ヘロデが死ぬまでそこにいた。」(2:14~15)
 「彼は、立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地に入った。」(2:21)

→あなたの番です
 □必要なら、そこから逃げましょう  
 □指示があったら、ホームに帰りましょう