マタイ10:16~23  用心しなさい

 ヨセミテ国立公園にはハーフドームと呼ばれる山があります。お椀を逆さにして半分を切り落としたような花崗岩の塊で、渓谷の底から頂上まで1500mの高さがあります。何度もハーフドームを上った人は初心者に次のような注意をします。登り始めたら5分くらいは決して下を見ないこと。不安だったら命綱のフックを鎖につなぐこと。大の大人が泣いて降りてくるほど怖い場所だと覚悟を決めること。

 キリストの弟子として生活することは、まるでハーフドームを登ると決めることです。もし、キリストのようになりたい、福音を伝えたいと願うなら、今日の箇所のような困難があなたを待っています。嫌なら登る必要はありません。けれども、頂上にたどり着いた人だけが見える景色があります。


1、用心しなさい

 マタイ10章全体の内容は、十二弟子を二人一組で伝道に遣わすに当たって主イエスが与えた注意事項です。特に今日の箇所では、福音を伝えるなら逮捕、尋問、迫害が起こるので心の準備をしなさいという警告です。

いいですか。わたしが、あなたがたを遣わすのは、狼の中に羊を送り出すようなものです。ですから、蛇のようにさとく、鳩のようにすなおでありなさい。人々には用心しなさい。彼らはあなたがたを議会に引き渡し、会堂でむち打ちますから。(マタイ10:16~17)

十二弟子が各地を巡るようになると、病気がいやされて喜ぶ人や、神の国の福音を歓迎して主イエスを信じる人が多数起こされます。十二弟子や主イエスを憎む者たちは、主イエスや弟子たちの人気を妬み、様々な方法で妨害します。

伝道旅行は、まるで狼の群れに羊を送り出すことです。多数の狼に囲まれて、羊が無事でいられるはずがありません。だから生き残るために、知恵や賢さが必要なのです。人々の悪巧みを見抜く洞察力が不可欠です。相手がどんなに邪悪でも、神の前の素直さは失ってはならないのです。嘘に嘘で対抗してはいけないし、暴力に暴力ではむかってはいけないのです。不必要な逮捕、裁判、暴力を上手に回避しましょう。主イエスも、祭司や律法学者に憎まれましたが、3年間逮捕されずに活動できました。あなたも、周囲の人々を無用に怒らせたり、いら立たせてはいけません。人にはくれぐれも用心して、さとく、素直に生きましょう。



2、心配いらない

また、あなたがたは、わたしのゆえに、総督たちや王たちの前に連れて行かれます。それは、彼らと異邦人たちにあかしをするためです。人々があなたがたを引き渡したとき、どのように話そうか、何を話そうかと心配するには及びません。話すべきことは、そのとき示されるからです。というのは、話すのはあなたがたではなく、あなたがたのうちにあって話されるあなたがたの父の御霊だからです。(マタイ10:18~20)

 逮捕されたり、訴えられれば、裁判の席で弁明することになります。総督や王たち、また、宗教権威者や議員たちなど地域の有力者の前で話すことになります。それには、主の目的があります。あかしするために、地方法院に連れて行かれるのです。

 そんな時は、足がふるえ、口がからからになり、頭が真っ白になり、質問も聞き取れないかもしれません。でも、「何を話そうかと心配するには及びません。」なぜなら、そういう場面では、あなたが語るのではなく、「あなたがたのうちにあて話されるあなた方の父の御霊」が語るからです。これは、大きな励ましです。

 あなたの人生にも同じことが起こります。親戚の法事に出席した、会社の忘年会に出た、同窓会に顔を出した、そんな時急にあなたの洗礼の理由を聞かれることがあります。テーブルにいる人々があなたの言葉に興味を持っているのが分かります。そんなとき、19~20節を思い出してください。どのように語ろうかとか、何を話そうかと心配する必要はないのです。あなたの内に住まれる神である聖霊が話してくれます。あなたは、逃げずに、祈りながら、あかしして下さい。言葉は聖霊から与えられます。

 

3、耐え忍ぶ

兄弟は兄弟を死に渡し、父は子を死に渡し、子どもたちは両親に立ち逆らって、彼らを死なせます。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての人々に憎まれます。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。彼らがこの町であなたがたを迫害するなら、次の町にのがれなさい。というわけは、確かなことをあなたがたに告げるのですが、人の子が来るときまでに、あなたがたは決してイスラエルの町々を巡り尽くせないからです。(マタイ10:21~23)


 信仰のハーフドームを登ろうとしている人は、大きな迫害を受けます。特につらいのは、親や兄弟や子供たちから受ける無理解や激しい軽蔑や暴力です。ハーフドームを登るつもりのない人は、この種の困難には直面しません。

 家族、親族、友人などの身近な人が、あなたを迫害するときは、最後まで耐え忍ぶと覚悟を決めましょう。耐えるという決意があなたを支えます。

 アメリカ人の最初の宣教師と知られているは、アドニラム・ジャドソンです。名門ブラウン大学を首席で卒業した秀才で、1823年にビルマ(今のミャンマー)に到着しました。聖書をビルマ語に翻訳する作業に取り掛かりましたが、36歳の時(1824年)、イギリスとビルマが戦争になり、スパイ容疑で彼は投獄されました。飢え、暑さ、悪臭、虫、拷問を乗り越え、約2年後に釈放されました。彼の妻アンが夫のために食事を差し入れたことが大きな支えでしたが、同じ年、アンは病のために天に召されました。幼い子供も召されました。しばらくはジャドソンは妻の墓から離れられず、失意と悲嘆に暮れ、自身も死を覚悟しました。その後、聖書翻訳の作業に再び取り組み、完成させ、ビルマの土となるまで宣教を行いました。

主イエスの弟子となると覚悟したなら、御国の福音を真剣に伝えようとするなら、不当な逮捕、有力者の前での尋問、厳しい迫害に遭うかもしれません。そんな時は、不用意に逮捕されないように賢くて素直な心を大切にしましょう。あかしをする場面が来たら、心配せずに語りましょう。そして、迫害が襲ってきても驚かずに耐え忍びましょう。

「どのように話そうか、何を話そうかと心配するには及びません。話すべきことは、そのとき示されるからです。」(19節)


→あなたの番です
 □賢く、素直で、用心を怠らない
 □あかしする時は心配しないで、御霊にゆだねる
 □迫害に直面した時は、耐え忍ぶ