上滑りする言葉 ヨブ記22章1~30節

 今日のメッセージの副題を、「信仰ゆえの楽観・積極人生の勧め」とします。

 あなたは悲観的な人ですか。楽観的な人ですか。今、ため息をついた人は悲観的な人です。自分が楽観的な人だと思う人は手を上げてください。手を上げられた人は本当に楽観的な人だと思います。「あの人がそうは思えない」と心で思った人は、間違いなく悲観的な人です。

 ヨブ記22章は、議論がちょうど三巡目に入った場面です。ヨブの友人三人の中で最長老格に当たるエリファズが意見を述べたのが今日の箇所です。エリファズはヨブとの対話を重ねるうちに苛立ちが先行するようになり、なりふり構わずヨブを説き伏せようという姿勢になりました。
22章でエリファズは、否定的で、上滑りした意見3種類を述べます。

1) ヨブがどんなに正しくても神には関係ない。

「人は神の役に立つことができようか。
賢い人でさえ、ただ自分自身の役に立つだけだ。
あなたが正しくても、
それが全能者に何の喜びであろうか。
あなたの道が潔白であっても、
それが何の益になろう。」(2、3節)

 なんと悲観的な意見でしょう。罪深く、有限で、弱い私たち人間をご存知の上で、神は様々な使命を人間に与えてくださいました。神は人間に失望してない、神は人間に期待している、というのが聖書を貫く中心思想です。「わたしの目には、あなたは高価で尊い」(イザヤ43:3)とはっきり書かれています。時として我々もエリファズのような悲観論に飲み込まれるときがあります。

 悲観的な人の声は巷にあふれています。人間の声を録音しようした人がいました。そんなもの不可能だと意見が出ました。いまだかつて誰もできなかった、というのが反対理由でした。それを無視してエジソンは1877年蓄音機を作りました。
 ミルトン・ライト牧師は、人間が空を飛ぶなどありえない事だとメッセージで語りました。その息子のウィルバーとオービルは、1903年12月17日キティーホークの海岸で12馬力の飛行機で世界ではじめて人間の乗った飛行機を飛ばすことに成功しました。
 1978年、日本のある電気会社で録音ができないテープレコーダーを発売することにしました。<録音できなければ誰が買うか>、<そんな変な和製英語では恥ずかしい>とか、否定的な意見が出ましたが、やってみました。これがSONYのウォークマン誕生の経緯です。


2) ヨブはひどい悪を行っている。

「あなたは理由もないのに、
あなたの兄弟から質を取り、
裸の者から着物を剥ぎ取り、
疲れている者には水も飲ませず、
飢えている者に食物を拒んだからだ。」(6~7節)

 これは、事実ではなく、エリファズの邪推です。第一、裸の人からは着物は剥ぎ取れません。
思い出してください。エリファズが最初に口を開いたとき何と言ったか。4章3~5節で、ヨブの善行を高く評価して、しっかりしろ、お前は他人が苦しんだときは助けてきたじゃないか、それが自分に及んだ時にはしゃんとしろ、と言っていたのです。

 悲観的な人は、人の悪い面ばかり見ます。人の欠点だけが目に入ります。さらに、かってな妄想、思い込みで、人をどんどん悪く仕立て上げていきます。人の良い点を見ましょう。

 日本プロ野球伝説の打撃コーチと呼ばれる高畠という人がいました。首位打者や盗塁王などのタイトル獲得選手を30人育てあげ、引退後は福岡で高校教師になり、NHKドラマにもなりました。その原作『甲子園への遺言』という本を読んでなるほどと思いました。
高畠コーチは選手の悪い癖や欠点は直らないものだと言い切りました。それではどうするか。徹底的にほめるのだといいます。30年間、ほめ続けました。あるときは、スイッチヒッターへ転向させた選手に秋から春まで付きっ切りで指導しました。はじめて左打席に立ったとき、「いけるぞ、これならいける。いいセンスしてるな」最初からほめ続けたといいます。この選手は後にパリーグ首位打者になりました。良いところを伸ばす。これが高畠コーチの秘訣でした。ほめた時はじめて人は伸びるのです。

 世界には、見方と敵がいるのではありません。自分の心が敵を作るのです。世界にいるのは隣人だけですね。その隣人を愛しましょう。その隣人に励ましの言葉を贈りましょう。

3) 神に立ち返れば、幸せになれる。

「さあ、あなたは神と和らぎ平和を得よ。
そうすれば幸いが来よう。」(21節)
 
エリファズは、邪推に基づきヨブを悪人に仕立て、どんなに潔白であったとしても神の役には立たたないとやる気を失わせた後で、こういう正論で説教しました。
ヨブは聞く耳を持ってなかったでしょう。文脈を無視して読めば、まぎれもなく聖書の真理です。良い言葉です。正しい言葉です。でもこれがヨブに向けられた言葉なら、むしろ逆効果でしょう。

 22章は、さしずめ、人の振り見て我が振り直せという箇所ですね。反面教師、他山の石ですね。こうならないようにしなさい、というのも実は後ろ向きですね。積極的な表現でメッセージを締めくくりましょう。
誤解しないでください。皆がイケイケのあっかるい人になれと言っているつもりはありません。神を信じているなら、全能者である神に頼って楽観的に行きましょうと勧めているのです。

最後にあなたへの具体的な3つの提案をします。

① <やってみよう>の精神を持ちましょう。
② 人をほめて励ましましょう。
③ 心からの言葉を伝えましょう。

 エリファズは、やってもダメだと言いました。そんなことないですよ。神がおられるんだから、あきらめることはないのです。やってみよう。神は私たちを絶えず応援しておられる。
エリファズは人の悪い面ばかりを強調した。むしろ、人を応援する者になろう。あなたも雇われてプロのコーチになったつもりで、身近な人をほめて、ほめて、励まし続けよう。
エリファズは上滑りする言葉でお説教しました。それより、何千倍も価値があるのは、前向きで、さわやかな積極的言葉だ。
  ありがとう。
  嬉しいです。
  やってみましょう。
  感謝します。
  おはようございます。
  おいしいです。
  私がやります。

さあ、あなたの番です。神の力によって、やってみましょう。