ヨハネ21:15~17 出直し

 どうやってペテロは失敗から立ち直ったのか。それが、今日のテーマです。

 最初に結論めいたことを言います。ペテロは自分で立ち直ったというより、イエスさまに背中を押されて立ち上がったのです。再出発のイニシアティブは主が握っておられます。
 もう十分だとか、まだ早いとか、出直しの時期を判断するのは人間ではないと思うのです。主イエスは、なんと裏切られて3日後にペテロに会いに行かれました。(ヨハネ20:19)

 木曜の深夜、ペテロは主イエスを知らないと3度言いました。主イエスは金曜に十字架につけられ、殺され、埋葬されました。土曜日には動きがなく、日曜の夕方、主イエスは弟子たちのいた部屋に突然現れて、手とわき腹の傷を見せ、平安あれと語りかけました。出直しは、主イエスが近づいてくださることによって始まったのです。

 その後、十二弟子はガリラヤに一旦戻ります。天使がマグダラのマリヤに次のように告げたからでした。
「ですから行って、お弟子たちとペテロに、『イエスは、あなたがたより先にガリラヤへ行かれます。前に言われたとおり、そこでお会いできます。』とそう言いなさい。」(マルコ16:7)
 注目してください。ペテロの名前が十二弟子とは別に言及されています。ペテロ、ガリラヤでまた会おう、という主イエスの意図がはっきりうかがえます。

 「夜が明けそめたとき、イエスが岸べに立たれた。」(ヨハネ21:4)

 主イエスがあなたの岸辺に立たれるとき。それが、あなたの再出発の夜明けになるのです。
 主イエスは、あなたの岸辺に立っておられるはずです。

1、原点に戻る

 主イエスは、ペテロの出直しを後押しするため、ガリラヤ湖を舞台に選びました。それは、何のためでしょう。ペテロに原点を思い出させるためです。

 「イエスは彼らに言われた。『舟の右側に網をおろしなさい。そうすれば、とれます。』そこで、彼らは網をおろした。すると、おびただしい魚のために、網を引き上げることができなかった。」(ヨハネ21:6)

 この出来事、過去に似た出来事がありませんでしたか。漁をしても一晩中一匹も取れず、主イエスの指示に従うと大漁になる。そうです、ルカ5:1~11とそっくりです。

 ペテロたちは、今日の箇所で、主イエスが用意された焚き火で魚を焼き、パンを食べました。3年間、主と共に過ごした日々が否が応でも思い出されたはずです。
 このようにして、主イエスは、弟子たちにの原点を確認させました。主イエスと共に生活したこと、それが信仰の原点なのです。

 ペテロは3度主イエスを否むという失敗をしましたが、失敗だけに目を留めると、大切なことを見失います。失敗は、私たちの生活スタイルの歪みが表出しただけにすぎません。いわば氷山の先端なのです。だから、原点に立ち返ることは、その全体の歪みを正す鍵になります。

 あなたは原点は何ですか。
 自分の罪に気づいて涙した時。十字架の意味が分かったとき。主イエスの愛に包まれたとき。赦されたことが分かったとき。
 毎朝聖書を読んで、祈っていたときの安定感。礼拝のとき、心に迫ってきた神の言葉。これらは、みなあなたの原点です。原点を取り戻しましょう。


2、誰よりも主イエスを愛す

 食事が終わると、十二弟子のいる前で、主イエスはペテロに尋ねました。
 「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たち以上に、わたしを愛しますか。」(ヨハネ21:15)

 ペテロが最後の晩餐のとき、「たとえ全部の者があなたのゆえにつまずいても、私は決してつまずきません。」(マタイ26:33)と豪語したことを主は覚えておられました。他の弟子たちも忘れていません。それで、この人たち以上にわたしを愛すかとあえて尋ねられたのです。これは、過去の清算です。けじめをつけることです。
 ペテロはあの時とは違います。自分の愛の限界を悟っていたので、謙虚に答えました。
「『はい。主よ。私があなたを愛することは、あなたがご存じです。』イエスは彼に言われた。『わたしの小羊を飼いなさい。』」(ヨハネ21:15)

 主は2度目に同じことを尋ねました。わたしを愛すか。ペテロは、同じ答えをします。主は同じ質問を3回されました。ペテロは傷つきました。<主よ、私はあなたを愛しています。心から愛しています。それは、あなたが一番知っておられます。>ここで初めて、主イエスの意図が分かったはずです。自分は3度主を否んだけれど、愛しますと3度言うことによってその失敗を帳消しにされるのだ、と気づきました。
 
 さて、女性は夫にこう尋ねるときがよくあります。「あなた、私のこと、愛しているの?」夫たちは、この瞬間をとても恐れます。愛してるさ、と答えても、妻は納得しないことを経験的に知っているからです。私はあなたをこんなに愛してきたのよ、という大前提があって女性たちは言っているのですから、夫たちに勝ち目はありません。

 「わたしを愛しますか」と主イエスがペテロに尋ねたとき、大前提があることを見逃さないでください。主イエスは、以下のような大前提で語っているのです。
 ペテロ、あなたを愛しているよ。たとえ、あなたが3度私を裏切っても、私はあなを見捨てない。ガリラヤに来たのは、あなたに会うためだ。あなたのために、命を捨てた。わたしは、今までも、これからもずっと、あなたを愛していく。

 深い主イエスの愛にきちんと応答しましょう。主イエスを愛します。これからも先ずっと、これが出直しの原動力になります。罪を振り払い、誘惑に負けない心は、主イエスをまごころから愛すことによって養われます。


3、新しい使命

 アメリカで今年出版された『ザ・メンター・リーダー』という本があります。著者は、トニー・ダンジー。2007年スーパーボウルでインデアナポリス・コルツを勝利に導いた黒人ヘッドコーチで、敬虔なクリスチャンです。その本の中で、スーパーボウルでベテラン選手が負傷したとき新人が立派に役割を果たした例を引き、新人選手はベテラン選手を見て習い、先輩は新人に時間をとって自分が獲得した技を教える、というチームの基本に触れています。

 主イエスは最高のコーチです。まず、「わたしについて来なさい」、見て学べと言われ、3年間が過ぎました。最後には、おまえに任せたと言って、離れて行かれるのです。

 「わたしの羊を飼いなさい」(17節)

 人生の出直しのとき、あなたもペテロのように神から新しい使命をもらいます。それは、あなたの野心ではなく、主のビジョンです。わ・た・しの羊と言われているのは、そのためです。主イエスの羊を養うのがペテロの使命になりました。わたしの大切な人々をあなたに委ねた、あとはよろしくと主イエスが言われているのです。


→あなたの番です。
□あなたの岸辺に立つ主イエスに気づきましょう
□あなたの信仰の原点に立ち戻りましょう
□主イエスを愛します、と主に告白しましょう
□新しい使命、主のビジョンを引き受け、生涯かけて全うしましょう