ルカ1:29~55 マリヤとエリサベツ


 クリスマスの裏舞台で何が起きていたのでしょう。

1、マリヤ、エリサベツに会いに行く

天使ガブリエルは、ナザレに住んでいたマリヤのもとに突然現れ、「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられます。」(ルカ1:28)と語りました。マリヤは驚き、恐れました。天使の語った内容があまりにも突飛だったからです。マリヤが聖霊によって妊娠し、男の子が誕生し、名前はイエスになり、その子はすぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれるというのです。

マリヤは、「ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりにこの身になりますように。」(ルカ1:38)と、信仰を持って天使の言葉を信じ受け入れいました。

結婚前に身ごもった女性は死刑になる可能性があります。また、いいなずけのヨセフがどんな態度を取るか未知数です。
聖母マリヤと呼ばれるように、マリヤを理想的な女性としてとらえる人が多いです。当時の結婚では、花嫁の年齢が十代というのが普通でした。ですからマリヤも二十歳に満たない女性だと考えるのが妥当です。これからどうしよう。マリヤに恐れと心配が生まれたことでしょう。マリヤの取った方法は、親戚のエリサベツに会いに行くことでした。エリサベツなら分かってくれる。

 そのころ、マリヤは立って、山地にあるユダの町に急いだ。そしてザカリヤの家に行って、エリサベツにあいさつした。(ルカ1:39~40)

ナザレからエルサレム近郊のユダの山地までの距離は直線距離で100キロ以上あります。でも、どうしても会わなくてはいけないのです。

マリヤがエリサベツに会いに行ったのは、エリサベツ夫婦が特殊な経験をしていたからでした。エリサベツの夫ザカリヤは祭司でした。天使ガブリエルが高齢のザカリヤ夫婦に、子供が生まれると予告したとき、彼は素直に信じなかったため、言葉が話せなくなりました。(ルカ1:5~23)その後、エリサベツは妊娠し、妊娠5ヶ月になっていました。そのエリサベツのことは、天使ガブリエルがはっきり指摘していましたが、そのエリサベツの経験こそが、マリヤを励まし、支えてくれるはずだと悟ったのです。

 あなたの番です。
 あなたが信仰上で何か課題を抱えた場合、尊敬できる信仰者のところに行って、相談しましょう。マリヤのように。これは、あまりにも当たり前のアドバイスですが、訪ねて行かない人が多いので、あえて言います。
 遠くても出かけて行って、ゆっくりと時間を取ってもらって、あなたの心の中にあることを話し、信頼できる人に祈ってもらって下さい。



2、神は大いなることをしてくださる

 エリサベツはマリヤの母親と同じくらいの年齢でしょう。(7節)もっと上かもしれません。エリサベツはずいぶん長い間、子供が与えられるようにと主に祈ってきました。(13節)
御使いガブリエルがエリサベツの夫のザカリヤに現れてから、月日は流れ、今は、妊娠6ヶ月になり、お腹も大きくなったことでしょう。
マリヤがエリサベツに会えた時の感激は言葉に言い表せませんでした。

そしてザカリヤの家に行って、エリサベツにあいさつした。エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、子が胎内でおどり、エリサベツは聖霊に満たされた。そして大声をあげて言った。「あなたは女の中の祝福された方。あなたの胎の実も祝福されています。私の主の母が私のところに来られるとは、何ということでしょう。ほんとうに、あなたのあいさつの声が私の耳にはいったとき、私の胎内で子どもが喜んでおどりました。主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」(40~45節)

 エリサベツからみれば、娘か孫のようなマリヤですが、エリサベツがマリヤの挨拶を聞くと、特別なことが起きました。エリサベツは聖霊に満たされたのです。また。エリサベツのお腹の中にいた赤ちゃんが、喜んで踊ったことが分かりました。単に、赤ちゃんが動いたというのと違うのです。その赤ちゃんとは、将来、バプテスマのヨハネになる人です。

 エリサベツはマリヤを励まして言いました。「主によって語られたことは必ず実現すると信じきった人は、何と幸いなことでしょう。」(45節)

 エリサベツは、マリヤの生き方を100%認めてくれました。また、マリヤを賞賛しました。それは、マリヤにとって、何よりも必要な励ましでした。マリヤの体験したことも残らず聞いたはずです。
 それでいいのよ。世間の人がうさん臭い目であなたを見ても気にしない。神は語られたことを実現する方よ、うちの夫は、祭司のくせに、神の言葉を信じられなかったからずっと話ができないの。きっと良い薬になったと思うわ。あなたは、そのまま信じたから何の不自由もなくてよかったわね。あなたを尊敬するわ。そんな会話があったのかもしれません。

 マリヤは、後の時代の人が「マリヤの賛歌」と呼ぶ賛美の言葉をこの時に歌いました。取るに足りない自分に目を留めた神をたたえ、神のなさることの素晴らしさをたたえ、アブラハムへの約束であるとの理解を示しました。驚嘆すべき内容です。
 作曲家のバッハは、このマリヤの賛歌にメロディーを付け、「マニフィカト わが心 主を崇む」BWV 243として知られています。
 マリヤは言った。「わがたましいは主をあがめ、わが霊は、わが救い主なる神を喜びたたえます。主はこの卑しいはしために目を留めてくださったからです。ほんとうに、これから後、どの時代の人々も、私をしあわせ者と思うでしょう。力ある方が、私に大きなことをしてくださいました。その御名は聖く、そのあわれみは、主を恐れかしこむ者に、代々にわたって及びます。(46~50節)

 「力ある方が、私に大きなことをしてくださいました。」(49節)マリヤは、自分の内に始まっている事実に驚嘆しているのです。神に用いられることの幸いを述べているのです。
 この言葉は、クリスマスを迎えるあなたにも語られています。力ある神が、今のあなたに、大きなことをして下さいます。

 マリヤはこの後、3ヶ月、エリサベツと共に過ごしました。(56節)エリサベツの出産も近づいたので、身の回りの世話をマリヤが助けたはずです。二人は、祈り合い、励まし合ったことでしょう。

 クリスマスは、主のことばは必ず実現すると信じたマリヤの勇気ある信仰によってもたらされました。また、エリサベツの大きな励ましがあって実現しました。

 ところで、Mary, did you know?というクリスマスの歌を知っていますか。比較的新しいクリスマスの歌で、1984年に作られ、今では人気歌手などもクリスマスアルバムに入れる曲です。教会で降誕劇をするので、それに合ったクリスマスの歌を作ってほしいと依頼された、マーク・ローリー(Mary Lowry)が作詞しました。
 マリヤ、知っていたの?というフレーズが繰り返されます。マリヤ、あなたは知っていたの?あなたの赤ちゃんがやがて水の上を歩くことを。嵐を静めることを。盲人の目を開けることを。あなたを新しく生まれさせてくれることを。マリヤ、あなたが赤ちゃんの頬にキスすることは、神の御子の頬にキスすることだよ。あなたが腕に抱いて眠らせている赤ちゃんは、全世界を造られた創造主で、やがて世界を治める王になる方で、「ありて、ある者」と宣言される神ご自身なのだよ。という内容の歌詞です。ローリーは歌手でもあるので、彼自身の歌をYoutubeでご覧になって下さい。
 マリヤは、本当には、どこまで分かっていたのでしょうか。分かっているのは、天使から知らされたわずかな事だけを信じ、まだ見ぬ将来に向かって大胆に進んだ勇気ある信仰者で、神に用いられた特別の器だったということだけです。

 あなたの番です。
 力ある神は、あなたの中にも大きなことをして下さいます。
 
 あなたの番です
  □主によって語られたことは必ず実現します
  □信仰の友の所に行って、励ましを受けよう   □私の中に神は大きなことをして下さる