マタイ1:1~16 系図の意味


 マタイの福音書の最初の壁は、系図です。その系図に隠された意味を探りましょう。

 主イエスの系図を冒頭に置いたのはマタイの福音書だけです。また、旧約聖書の引用が50箇所、旧約聖書への言及が70箇所以上、マタイの福音書にあると学者は言います。ユダヤ人の読者を想定したマタイの福音書ならではの特徴です。

 
1、アブラハムの子孫、ダビデの子孫

アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。(マタイ1:1)

 「アブラハムの子孫」とあります。アブラハムはユダヤ民族の祖です。救い主はアブラハムの子孫から生まれなければなりません。救い主は、ユダヤ民族の中のユダ族(2~3節)から生まれるとも預言されていました。(ミカ5:2)

アブラハムとその子孫の役割は、「地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」(創世記12:3)とあるように、世界に神の祝福を届けることでした。主イエスこそが、すべての人類が求めている祝福を与えることのできる方です。

次に、「ダビデの子孫」とあります。主イエスは、人を滅びから救い、罪を完全にゆるし、生きる希望を与え、愛と正義を行う力を与える救い主です。
 救い主は、ダビデ王の子孫から生まれると旧約聖書は預言したので、ユダヤ人は救い主のことを「ダビデの子」と呼びました。

 この系図はひとことで言うと、主イエスが世界に祝福を与える方であり、すべての人の救い主だということを示しています。系図は戸籍のようなもので無味乾燥に感じるかもしれませんが、歴史的事実に基づく系図自体に力があるのです。
誰も自分の系図をプロデュースしたり、改変できません。生まれてきたら、その家系にいたのです。系図を支配できるのは神だけなのです。救い主の誕生には、神の深くて長い計画があったのです。

2、女性の名前

アブラハムにイサクが生まれ、イサクにヤコブが生まれ、ヤコブにユダとその兄弟たちが生まれ、ユダに、タマルによってパレスとザラが生まれ、パレスにエスロンが生まれ、エスロンにアラムが生まれ、アラムにアミナダブが生まれ、アミナダブにナアソンが生まれ、ナアソンにサルモンが生まれ、サルモンに、ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが 生まれ、オベデにエッサイが生まれ、エッサイにダビデ王が生まれた。ダビデに、ウリヤの妻によってソロモンが生まれ、(1:2~6)

 この系図には女性が4人登場しています。その女性とは、タマル、ラハブ、ルツ、ウリヤの妻です。ルカの福音書3:23~38にも主イエスの系図がありますが、女性の名前はありません。本来、系図は男性の名前だけで完結するものです。

タマルは未亡人になった後に義理の父によって子を産みました。ラハブはエリコの町で働いていた売春婦。ルツは外国人で、モアブの地から移民して来た未亡人。ウリヤの妻バテシェバは、ダビデが姦淫の罪を犯した相手です。

できれば伏せておきたい女性の名前をあえて前面に出したのは、理由があります。主イエスは、ユダヤ人だけでなく世界の人々を救うための救い主であり、男も女も関係なく、すべての罪人を救う方であることをマタイは言いたかったのです。


3、王たちの名前

ソロモンにレハベアムが生まれ、レハベアムにアビヤが生まれ、アビヤにアサが生まれ、アサにヨサパテが生まれ、ヨサパテにヨラムが生まれ、ヨラムにウジヤが生まれ、ウジヤにヨタムが生まれ、ヨタムにアハズが生まれ、アハズにヒゼキヤが生まれ、ヒゼキヤにマナセが生まれ、マナセにアモンが生まれ、アモンにヨシヤが生まれ、ヨシヤに、バビロン移住のころエコニヤとその兄弟たちが生まれた。バビロン移住の後、エコニヤにサラテルが生まれ、サラテルにゾロバベルが生まれ、ゾロバベルにアビウデが生まれ、アビウデにエリヤキムが生まれ、エリヤキムにアゾルが生まれ、アゾルにサドクが生まれ、サドクにアキムが生まれ、アキムにエリウデが生まれ、エリウデにエレアザルが生まれ、エレアザルにマタンが生まれ、マタンにヤコブが生まれ、ヤコブにマリヤの夫ヨセフが生まれた。キリストと呼ばれるイエスはこのマリヤからお生まれになった。それで、アブラハムからダビデまでの代が全部で十四代、ダビデからバビロン移住までが十四代、バビロン移住からキリストまでが十四代になる。(7~17節)

 7~11節の系図を見て気づくことは、王家の系図だということです。ヒゼキヤやヨシヤのような良い王もいます。マナセなどの悪い王もいます。ユダヤ王国が滅びバビロン捕囚後には、ゾロバベルなどがリーダーになって祖国回復の努力をしましたが、やげてギリシアやローマという大帝国に占領され、王国の栄光は過去のものになり、王たちの末裔も12~16節のように庶民となっていきました。

7~16節のダビデ以降の系図を見るならば、ユダヤ民族がまことの王、まことの指導者を待ちこがれる気持ちが分かります。

マタイは、彼の書いた福音書全体を通じて、主イエスこそ旧約聖書が預言した救い主であり、人々が待ち望んでいた王であることを証明しようとしています。

4、私たちの系図

 系図は人間の手の及ばない分野です。神は、アブラハムの子孫に、そして、ダビデ王の子孫に救い主を起こすという約束をされ、その後の歴史を支配し、ついにクリスマスに主イエスが生まれるようにされました。

 さて、もしあなたが、岸から200mほどの小島の灯台に家族で住むことになったらどうでしょう。アイダという女の子は、その島に一家族だけ住む、灯台守の娘でした。そんな家系に生まれてことを嘆くこともできましたが、アイダは不便な生活を楽しみました。手漕ぎボートで弟を学校に送迎することで船の操舵に熟練し、島の周囲の海で遊んで水泳の腕を上げました。15歳の時、お父さんが脳出血で倒れたので灯台の仕事を助けるようになり、やがて自分も正式な灯台守になりました。そして、荒海で遭難した人をボートで救助に向かい在職中に18人の命を救いました。当時、アメリカで最も勇気ある女性として評判になりました。ロードアイランド州で生まれてアイダ・ルイス(Idawalley Lewis, 1842-1944)です。

 あなたの番です。神が歴史を支配する方ならば、私たちも神の歴史の1ページの登場人物です。神の歴史には脇役は一人もいません。神は私たちを守ってくれます。どんなアクシデントが起ころうと、一時的な困難に巻き込まれても、神が私たちを歴史の登場人物として豊かに用い、私たちの人生を通して栄光を表してくださることを信じましょう。

アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図。(マタイ1:1)

→あなたの番です。
□主イエスは、救い主であり、まことの王
□歴史を支配する方が、今日も私たちを守って下さる