エペソ6:5~9 主人と奴隷

 あなたは誰かの奴隷ですか。

 この現代に、奴隷などいるはずはないと普通は考えますね。そうでしょうか。心にズキンと感じて、私は奴隷だ、とうなずく人もいるはずです。

 今日は、主人と奴隷について考えましょう。これは、とても現代的な問題です。また、これは、御霊に満たされた人が職場でどう生きるのかという内容です。ご一緒に考えてみましょう。

1、奴隷への教え

 奴隷制度は、人間社会が始まって以来ずっとありました。創世記の時代にすでに奴隷はいました。人は昔から他人を非人間化し、搾取しようとする罪があるのです。

 戦争の敗者は相手国の奴隷になりました。借金が払えないときにも奴隷になります。ローマ帝国は奴隷なしに存在できませんでした。中世ヨーロッパには、農奴がいました。産業革命後は、炭鉱や工場に労働者が流入し、危険な長時間労働を強いられました。新大陸アメリカで一儲けしようという資本家は、労働力確保のため多数のアフリカ人を奴隷として連れてきました。いつの時代にも奴隷はいたのです。

 『グローバル経済と現代奴隷制』を書いたケビン・ベイルズによると、少なく見積もっても現代世界には2700万人の奴隷がいるといいます。また、アメリカには毎年約15000人が奴隷として入国しているそうです。
 ベイルズの定義によれば、奴隷とは、①仕事への正当な代価をもらえず(多くの場合は無報酬)搾取された状態に置かれる人で、②暴力や精神的暴力を受け、恐怖に支配されている状態だといいます。

 夜遅くまで働いても残業手当を払わない企業があります。会社の指示に従わないと解雇されるとおびえ、不正な仕事を引き受けたり、低い労賃であきらめている人もいます。単純労働、危険な仕事、給料の低い仕事などはアメリカでは不法移民や低所得者が受け持っています。ノルマに追われるセールスマン、数字で頭をこずかれる課長、電話セールスを延々と繰り返すオペレーター。
 自分は奴隷のようだなと感じる人々は案外多いのです。

 明日の希望のない奴隷にパウロは何と言ったでしょう。天国に行けば楽になる、今はとにかく我慢だ、とは言いません。その反対に、奴隷たちよ逃亡しなさい、奴隷制度自体が間違っているとも言いません。こう言いました。

「奴隷たちよ。
あなたがたは、キリストに従うように、
恐れおののいて真心から地上の主人に従いなさい。
人のごきげんとりのような、うわべだけの仕え方でなく、
キリストのしもべとして、心から神のみこころを行ない、
人にではなく、主に仕えるように、
善意をもって仕えなさい。」(5~7節)

 パウロは積極的に自分から働くようにと指示しました。ポイントをまとめると以下の3つになります。

1)キリストのしもべとして
2)神のみこころを行う
3)主に仕えるように

 これは、いわばフォロアーシップの勧めです。指導者に必要なのはリーダーシップで、従う者に必要なのがフォロアーシップです。両方がかみ合わないと組織は動きません。
 自分とは何者なのかという発見、視点の転換、つまり、自分がキリストキリストのしもべなのだという自覚は、劣悪な環境でも胸を張って生きていける鍵になります。
 神のみこころに沿った生き方を自分から選びましょう。主人のごきげん取りのような仕事は、表面をつくろう行為なので心が空しくなります。主に仕えようという仕事は生きがいを生みます。

 旧約聖書のヨセフを思い出してください。奴隷の身に落ちぶれても、主は常にヨセフと共にいてその仕事を祝福してくださいました。「主はヨセフのゆえに、このエジプト人の家を、祝福された。」(創世記39:5)無実の罪で投獄されても、主に仕える姿勢は変わらず、やがてエジプトの宰相にまで上り詰めました。主に仕える姿勢がいかに力強いかを証明しています。

 あるパン屋さんがいました。朝早くからのきつい仕事でした。店の電話番号は4989、まるで四苦八苦と読めました。そのパン屋さんがクリスチャンになり、仕事に喜びを感じ、同じ電話番号も「良く焼く」と読めるようになりました。

 「人見るもよし、人見ざるもよし、我は咲く也」この武者小路実篤の言葉のように生きたらどうでしょう。主は、あなたを見ておられ、どんな場所でも共にいてくださいます。

 →さあ、あなたの番です。今週、仕事に対する姿勢を変えてみませんか。
□職場で積極的に仕事を学び、改善に乗り出そう
□あなたが社長のつもりで仕事を見直そう
□主の視点で仕事に取り組もう
□主に喜んで頂ける仕事、周囲の人の幸せになる仕事をしよう
□キリストをあかしする職業人になろう



2、主人への教え

 さあ、主人への命令です。パウロは、奴隷を解放するように命じましたか。

 「 主人たちよ。あなたがたも、奴隷に対して同じようにふるまいなさい。おどすことはやめなさい。あなたがたは、彼らとあなたがたとの主が天におられ、主は人を差別されることがないことを知っているのですから。」(9節)

 主人がなすべきことは以下の3つです。

1)奴隷と同じ覚悟で仕事に取り組む
2)おどすことをやめる
3)差別されない主を見上げる

 パウロは、主人と奴隷双方に、同じ心を持つようにと命じました。これは、天地驚愕の教えです。そうなると、主人も奴隷もなくなってしまいます。パウロは、本質的な意味で、奴隷制度を空洞化しようとしています。

 主人は奴隷を脅かしたり、差別してはいけないのです。大統領もホームレスも何の差別もないのです。みな等しく神の栄光のために生きる者となるべきです。

 会社の経営をする人、店のオーナー、学校の教師、専門職、学校で言えば先輩、リーダーと呼ばれるすべての人への教えです。
 主人たち、経営者たち、ボスと呼ばれる人たち。あなたは誰も脅してはいけないのです。暴力も言葉の暴力もありえないのです。働いてくれる仲間を誰よりも大切にしましょう。社員がハッピーな会社は栄えます。
 以下に、経営者の方々のヒントになるような具体的事例を挙げてみました。

 世界的に知られたあるコンサルティング会社では、上司が部下の成長にどれだけ貢献したかが評価対象になります。大事な事ほど後輩に教えないという封建的な日本の会社と正反対です。自分だけ昇進するというケチな生き方を捨てて、全社的な成長を目指すほうがダイナミックで健康的です。

 ミネソタにはクリスチャンの信仰を前面に打ち出して営業している銀行があります。融資を求めて来た方がいれば、その方の事業のためにその場で銀行員が祈るといいます。また、主イエスを大胆に語り、銀行のオフィスでイエスさまを信じた人が70人を越えているといいます。

 クリスチャンで弁護士の佐々木満男さんのモットーは<ドント・ウォーリー>です。クリスチャンになる前は、深刻に考え、思い煩う人で、しり込みしやすく、あきらめる人だっと述懐されています。でも、今は、生まれつきの性格とは正反対の生き方で多くの人を励ましています。心配でつぶされそうなクライアントに、ドント・ウォーリーと言える弁護士は立派なリーダーです。

 →あなたの番です。主人の立場の方々。経営者の方々。リーダーたちへのチャレンジです。
□高潔なビジネス・ミッションを掲げましょう
□脅さない、怒鳴らない
□人を物と考えない
□人を育てる経営者になる
□会社を明るく前向きな雰囲気にするのはあなたの役割です

 リーダーシップを用いる人も、フォロアーシップを期待される人も共に、顧客の笑顔と社員のスマイルのために、そして主の栄光のためになる仕事をしませんか。