創世記13:1~18 目を上げて何を見る

生きている限り私たちは何らかのトラブルに巻き込まれます。アブラムがトラブルをどう乗り越えたか、それを通して何を見上げるようになったか、創世記13章を見てみましょう。

1、トラブル発生

創世記13章の前半部分には、アブラムが親戚のロトとトラブルになり、平和的に別れたという内容が書かれています。

そこで、アブラムはロトに言った。「どうか私とあなたとの間、また私の牧者たちとあなたの牧者たちとの間に、争いがないようにしてくれ。私たちは、親類同士なのだから。全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。もしあなたが左に行けば、私は右に行こう。もしあなたが右に行けば、私は左に行こう。」(創世記13:8~9)

アブラムはロトを連れて旅をしてきました。ロトは、アブラムの兄弟ハランの息子、つまり、おい(創世記11:27)に当たります。ロトの父は早くに亡くなり、母親も登場しないことから、身寄りが無くなったロトをアブラムが引き取ったと思われます。
 しばらくは問題がなかったのですが、エジプトから戻りベテルにいた頃、アブラムの家畜とロトの家畜が増えるに従い、両者の羊飼い同士が小競り合いを起こしました。(13:5~7)狭い範囲で多くの羊を飼っていれば、水や牧草の奪い合いが起きたのは当然でしょう。

善意で始めたことが、いつのまにかトラブルになる。こういう事は、私達の日常生活にもしばしば起こります。自分から解決策を言い出しにくい場合があります。方法を間違えると、喧嘩になったり、嫌われたり、後々まで尾を引くことになります。

 アブラムの解決方法は以下の通りです。
1)冷静に事実を話し、親戚なので仲良くしたいと述べた。
2)分かれることが解決策だと提案した。
3)一歩譲って、相手に優先権を与えた。
4)神の約束を信じていたので、カナンの地から離れなかった。

 大学の頃に私は、著名なカウンセラー平木典子先生から心理学やカウンセリングを学び、また、大学卒業後にはアサーティブ・トレーニングも受けました。平木先生は、この分野で日本の第一人者です。Assertiveの考え方は、さわやかな自己主張を行い、コミュニケーションを円滑化し、トラブルを解決する技術です。
Assertiveな生き方の基本手順は次のようになります。①事実を描写する「満員電車で、あなたの靴が私の足を踏んでいます」②事実に伴う自分の感情を表現する「私はサンダルなので、猛烈に痛いです」③解決方法を明確化する「あなたの足の場所を変えてもらえますか」④選択肢を提示する。「私がスーツケースを移動すればあなたの足の場所を確保できるでしょう。そうしてもらえないなら、あなの体を無理にでもドアに押し付けますよ」(describe explain specify →chooseというDESCの4段階)
アブラムの行動は、Assertiveな考え方にかなり近いのでびっくりします。

「私たちは、親類同士なのだから。全地はあなたの前にあるではないか。私から別れてくれないか。」(8~9節)

 人生においてトラブルは避けられないし、トラブルは嫌なものです。でも、トラブルは私達を成長させるチャンスになるし、何が大事なのかプライオリティーを確認させてくれます。

スティーブ・ジョブスは、21歳の時にアップルを設立し、30歳の時に同社から追い出され、ひどく落胆しました。でも、後になってこう言っています。「アップルを追い出されたことは私の人生で最良の出来事でした」彼は、成功ゆえの重圧から解放され、初心に戻ってNeXTを作り、アニメーション会社ピクサーで「トイストーリー」を作成し、人生で最もクリエイティブな時期を過ごせたと後に述べています。

 あなたは、今、どんなトラブルを抱えていますか。解決は必ずあります。第1コリント10:13に言う通り脱出の道が必ずあります。あなたが祈りと勇気を持って、ノーと言う態度がきっかけかもしれません。トラブルに出会った時は、主に頼りつつ、冷静に事実を描写し、自分の感情を伝え、明確に方向性を示し、選択肢を提示しましょう。



2、アブラムの見たもの

 主は、スポーツの名監督のように、要所でズバリとアブラムにアドバイスをされました。トラブルを乗り越えた後、人は相手の悪口を恨んだり、過去に捕らわれるものです。でも主は、彼に目を上げよと命じました。人生の指針となる主の約束に目を留めよと諭したのです。

ロトがアブラムと別れて後、主はアブラムに仰せられた。「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。立って、その地を縦と横に歩き回りなさい。わたしがあなたに、その地を与えるのだから。」(14~17節)

行く所を知らずに主の示す場所に出て行く事と、まだ実現していない神の約束を信じ続ける事は本質的に同じことです。アブラムは主と主の約束を信じました。

ロトが目を上げて見たのは、悪徳と背信の町ソドムとその付近の肥沃な地域でした。(10~13節)一方、アブラムは目を上げて、主の約束を見上げ、主が約束された全地に目を向けました。その後、アブラムはパレスチナ中央高地を南下してヘブロンに居を構え(18節)、主への祭壇を築きました。アブラムは、人生の節目となった場所、つまり、神の臨在を身近に感じた場所を記念して祭壇を築き礼拝をささげる人でした。ベテルでもアブラムは主に祈りました。「そこは彼が以前に築いた祭壇の場所である。その所でアブラムは、主の御名によって祈った。」(4節)祭壇で主を礼拝するたびに、神の約束を感謝し、神の約束は実現すると信じたのです。ヘブロンでも「主のために祭壇を」(18節)築きました。
たとえ、子供がいなくても、テント生活の遊牧民で一坪の土地も所有していなくても、アブラムは主の約束を信じました。

3Mに研究員のスペンサー・シルバーがいました。粘着力の強い糊の開発を依頼され、1968年、粘着力の弱い糊を作ってしまいました。それから5年たった頃、彼の同僚で教会の聖歌隊員だったアート・フライは讃美歌集にしおりを貼れてはがせる糊の便利さに気づきました。やがてこのアイデアが「ポストイット」として大ヒットし、世界100カ国以上で売られるまでになりました。実に小さな発明品でしたが、世界の人に便利さを提供できたのです。

あなたも言ってみれば失敗作です。(失礼!私もです)それでも世界は私やあなたを待っています。あなたは必ず祝福されるし、誰かの祝福になります。あなた自身を主と身近な人々のためにささげましょう。実現していない神の約束を信じましょう。救いと喜びと希望と慰めを世界に届けましょう。あなたに関する主の約束は必ず実現します。

「さあ、目を上げて、あなたがいる所から北と南、東と西を見渡しなさい。わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。」(14~15節)

→あなたの番です
 □トラブルには解決の道がある
 □神の約束を信じて、世界を祝福する者となろう