民数記

 人々がエジプトの国を出て二年目の第二月の一日に、主はシナイの荒野の会見の天幕でモーセに告げて仰せられた。(民数記1:1)

 民数記は旧約聖書4番目の書です。1章と26章で民の数を調査したので「民数記」と呼ばれます。ユダヤ人は1章1節の単語の一つをタイトルにして「荒野にて」と呼んでいます。実際のところ、出エジプト2年目から(民数記1:1)40年目(33:38)まで、イスラエルの民は荒野にいました。それは彼らの不信仰と不従順の結果でした。
 約束の地を偵察した12人の部族長らは悲観的な報告を行い、人々を失望させました。(13章)城壁がそそり立つ町に、長身で屈強な敵が多数おり、太刀打ちできない、別のリーダーを立てエジプトに帰ろう(14:4)とまで言いました。主に従わず主を信頼できない大人たちが死に絶えるまで、主は彼らが約束の地に入ることをお許しになりませんでした。

 民数記は、モーセの日記、覚書です。


1、つぶやく民

 イスラエルの民は何度もモーセに文句を言い、たびたび神に逆らいました。それが民数記の主な内容です。以下の6つの出来事は、その中の主要なものです。

1)肉が食べたい     11章
2)ミリヤムの反抗 12章
3)偵察隊の悲観報告          13~14章
4)コラの反逆        16章
5)メリバの水        20章
6)燃えるへび        21章

 これらの出来事を分析すると、3つのカテゴリーに分類されます。
第一は、食べ物への不満です。腹がへった。水が飲みたい。肉が食べたい。11章、20章、21章は、まさにその問題でした。
 第二は、指導者モーセに対するねたみや不服です。モーセの姉ミリヤムは、弟のモーセに公然と逆らいました。レビ人コラは、モーセに反旗を翻しました。
 第三は、神への反抗です。約束の地を偵察してきた民の代表者12人のうち、ヨシュアとカレブだけが、行こう、「必ずそれができるから」(13:30)と発言しましたが、残り10人は否定的な意見を述べ民は不信と不安に陥りました。

 民数記を読んでいると、イスラエルの民が学習しないのであきれます。不服や反乱の首謀者は処罰され命が絶たれますが、新たな人物が同じような不平と反抗を繰り返しました。

 イスラエルの民は誰かに似ています。私です。私たちにそっくりです。日常生活で、苦しくなると、私たちは不平を言います。リーダーに反抗的になります。不平や反感を声高にすると、周囲の人も影響されネガティブになって、次第にやる気を失います。

さて、あなたの番です。不平不満をすぐ口にする習慣を止めましょう。それだけでMake differenceです。苦しい中でも感謝を見つけ、お互いを励ます言葉を言いましょう。リーダーが苦しんでいればサポートしましょう。
 

2、指導者モーセ

 リーダーとは批判を受けるために生まれた人です。指導者モーセは40年間、指導者として苦労しました。あなたが主の民を殺した(16:41)とか、あなたは分を越えている(16:3)とか、モーセは非難の矢面に立たされました。

民数記11章では、民の中に混じった他国人が不満をぶちまけ、「ああ、肉が食べたい。エジプトで、ただで魚を食べていたことを思い出す。きゅりも、すいか、にら、たまねぎ、にんにくも。」(11:4)と叫びました。それにつられて民も泣き出しました。モーセはついに耐えられなくなりました。

「私だけでは、この民全体を負うことはできません。私には重すぎます。私にこんなしうちをなさるのなら、お願いです、どうか私を殺してください。これ以上、私を苦しみに会わせないでください。」(11:14~15)

「重すぎます」「殺してください」モーセは燃え尽きました。本来モーセは、イスラエルの民を救えないし、食物を与えることもできないし、全員を聖徒に変えることもできません。それなのにモーセは全部を一人で背負い込んでしまったのです。

人は人生の様々な局面でリーダーに立たされます。結婚すれば、実質的には、どちらかがリーダーです。子供が生まれれば、親たちは指導者です。後輩ができれば、あなたはリーダーです。リーダーには、リーダー特有の重荷がのしかかってきます。リーダーであるあなたは、この時のモーセのように燃え尽きていませんか。

深刻な悩みをある人から相談され、その人を心配するあまり自分が悩みを背負い過ぎ、相談を聞いた方がつぶれてしまう場合があります。プロのカウンセラーは、相談者と自分をはっきり区別しているので、悩みを自宅に持ち込みません。背負えるものと、背負えないものがあるのです。あなたがつぶれずに、適切にサポートしましょう。

モーセが指導者として40年間立ち続けられた秘訣があります。

1)一度、完全に燃え尽きたので限界が分かる。(11:13~15)
2)反発や非難を何度も経験して、強くなった
3)苦しい時は、ひれ伏して神にゆだねた(14:4~5)
4)民のために、とりなしの祈りをした         (16:22、21:7)
5)神がモーセをかばってくれた        (12:7~8)

 「モーセとアロンは、イスラエルの会衆の全集会の集まっている前でひれ伏した。」(14:5)
 「彼らを石で打ち殺そうと言い出した。そのとき、主の栄光が会見の天幕からすべてのイスラエルに現れた。」(14:10)
 「あなたがこの民をエジプトから今に至るまで赦してくださったように、どうかこの民の咎をあなたの大きな恵みによって赦してください。」(14:19)
 「しかしわたしのしもべモーセとはそうではない。彼はわたしの全家を通じて忠実な者である。彼とは、わたしは口と口とで語り、明らかに語って、なぞで話すことはしない。彼はまた、主の姿を仰ぎ見ている。なぜ、あなたがたは、わたしのしもべモーセを恐れずに非難するのか。」(12:7~8)

あなたが何らかのリーダーになったり、親になったならば、リーダーであることから逃げないことです。主は、リーダーたちをサポートし、いつも一緒にいてくれます。

 ローザ・パークスは1955年12月1日の夕方、アラバマ州でバスに乗っていました。白人が乗り込んで来たので、バスの運転手はローザの席を白人に譲れと命じました。彼女はそれを拒否し、逮捕され、投獄されました。この事件をきっかけに、マーチン・ルサー・キング牧師が中心となってバスボイコット運動が始まりました。
 翌月の1月27日、命はないぞ、この町から出て行けという脅迫電話を深夜に受け、26歳のキング牧師は動揺し、モーセと同じような気持ちになり、責任者を降りることを模索しました。台所で一人祈る中で、主イエスの臨在を今までにないほど強く感じ、正義のために立ち上がれ、真理のために立ち上がれ、わたしはあなたと共にいる、という主イエスの言葉を聞いたので、恐れは消え、態度が固まりました。
 3日後の1月30日、キング牧師宅の前面部分が爆弾で破壊されましたが、幸い奥さんと娘たちに怪我はありませんでした。キング牧師は、家に戻り、激昂している黒人たちを静め、武器は家に持ち帰るように命じ、兄弟である白人を愛そうと語りました。それが主イエスのみこころだと諭しました。3日前の主イエスの励ましと臨在はこの時のためだったと、キング牧師は後に述懐しました。ローザは当時42歳、自分より若いキング牧師に支えられました。キング牧師が恐れた姿を見たことがないと彼女は証言しています。

 リーダーとして立たされたあなたを、主は支え、共にいて離れず、かばってくれます。主がモーセを支えてくれたように。

 →あなたの番です
  □私も、不平を言い、反抗しやすい者です
  □主よ、私をリーダーとして支え用いて下さい