歴代誌第二



 クラシック愛好家を別にして、ベートーヴェンの交響曲第五番「運命」を最後まで聞く人は少ないですね。でも、最後まで聞いた人は、草原を疾走するようなの伸びやかで希望に満ちたメロディーが第4楽章にあることに気づくはずです。

 バビロンから解放されエルサレムに戻った人々は、滅びの歴史であることを承知の上で最初から最後まで王国の過去を丹念に調べました。王国再建のヒントが歴史に隠れていると思ったのです。最初から最後までちゃんと見直す。忘れられた歴史の中にも必ず宝が隠れていて、それは決して無駄ではなかった。歴代誌の視点はそこにあります。


 あなたの人生も、あきらめるのは早い。これからです。今から立て直せます。
今日は、ユダ王国の20人の王から3人の王を取り上げてみましょう。


1、ヨシャパテ王

 ヨシャパテ王は、ダビデの道を歩み、主の祝福を受けました。(歴代誌第二17:6)

私たちの神よ。あなたは彼らをさばいてくださらないのですか。私たちに立ち向かって来たこのおびただしい大軍に当たる力は、私たちにはありません。私たちとしては、どうすればよいかわかりません。ただ、あなたに私たちの目を注ぐのみです。」(20:12)

アモン人とモアブ人の大軍が迫って来ました。多勢に無勢、ヨシャパテは勝ち目がないと観念し、主の前に出て、人々と共に主の助けを願いました。すると、レビ人でアサフ族の賛美リーダーであるヤハジエルが、主の導きを感じて王と民にアドバイスしました。この戦いは神の戦いである、気落ちしてはならないと語りました。(20:14~17)

それで、ヨシャパテは地にひれ伏した。ユダのすべての人々とエルサレムの住民も主の前にひれ伏して主を礼拝し(20:18)

ヨシャパテは、ヤハジエルの言葉に共感し、民と共に主を礼拝し、賛美し、翌朝になると軍隊の先頭に聖歌隊を立て、主への賛美をしならが敵に当たりました。主に感謝せよ。その恵みはとこしえまで、と。結果は、大勝利となりました。(20:23)

試練や壁や恐れを感じたときは、まず、主を礼拝し、感謝する。これが基本です。


2、ヒゼキヤ王

 ヒゼキヤ王も、主の目にかなうことを行った信仰的な王でした。(29:2)偶像を取り除き、国民に主に仕えよと語りました。(30:8)

「強くあれ。雄々しくあれ。アッシリヤの王に、彼とともにいるすべての大軍に、恐れをなしてはならない。おびえてはならない。彼とともにいる者よりも大いなる方が私たちとともにおられるからである。彼とともにいる者は肉の腕であり、私たちとともにおられる方は、私たちの神、主、私たちを助け、私たちの戦いを戦ってくださる方である。」民はユダの王ヒゼキヤのことばによって奮い立った。(32:7~8)

アッシリア軍が北部から迫り、北王国イスラエルが征服され、じりじりと脅威が迫る中で、ヒゼキヤは城壁を補強して防備を固めました。エルサレムの民に対しては、主への信頼こそが最も大事だ、恐れるな、われらと共におられる方は強い方だと民を鼓舞しました。
アッシリヤ軍に包囲され絶体絶命のピンチに陥っても、ヒゼキヤは外国の保護に頼ったりせず、主に信頼し、預言者イザヤと共に主に祈りました。
すると、主が御使いを遣わしてアッシリヤ全軍を滅ぼされました。(32:21~22)

ところで、超一流スポーツ選手にはメンタル面を強くする専門コーチがいます。ある有名なコーチの本を読んでいたら聖書の考えに近かったので驚きました。重荷を誰かにゆだねた心境、感謝、生かされている感覚を持つという助言を選手たちにしていました。

困難に直面したときは、誰かのせいにしない。必要以上に恐れない。イライラを止める。弱音やマイナス面の言葉を言わずに、強くあれ、雄々しくあれ、主が共におられると自分に言ってみましょう。


3、マナセ王

 マナセはユダの20人の王の中で最悪の王でした。あらゆる神々を導入し、邪悪な人身供養を行い、うらないや霊媒を取り入れ、神殿の中に異教の偶像を据えました。(33:1~9)正義を踏みにじる悪政を行い、主の語りかけを一切無視しました。マナセによって王国の滅びが確定したといっても過言ではありません。

そこで、主はアッシリヤの王の配下にある将軍たちを彼らのところに連れて来られた。彼らはマナセを鉤で捕え、青銅の足かせにつないで、バビロンへ引いて行った。しかし、悩みを身に受けたとき、彼はその神、主に嘆願し、その父祖の神の前に大いにへりくだって、神に祈ったので、神は彼の願いを聞き入れ、その切なる求めを聞いて、彼をエルサレムの彼の王国に戻された。こうして、マナセは、主こそ神であることを知った。(33:11~13)

 マナセはバビロンまで連れて行かれ屈辱と苦難を経験しました。その時、主こそ神であると知り、自分の行いを悔い改めました。再びエルサレムに戻されると、マナセは主に立ち返りました。(33:15~16)
 この記録は列王記にはなく歴代誌だけにあります。マナセですら、やり直せた、と言いたいのです。ささやかな信仰回復も主の前に決して無駄ではないと言いたいのです。

 アンバー・ウエルスさんは、午後3:26発のフライトに乗り、旅客機が飛び立つと120まで数えました。離陸後2分間が危険な時間と何かで読んでいたので、いつもそうしていたのです。90まで数えると右のエンジンが爆発して火を噴きました。20番の座席だったので良く見えました。機長は、衝撃に備えて下さいとアナウンスしました。周囲の多くの人が静かな声で祈り始めました。アンバーさんも祈りました。できることはそれだけでした。いいえ、最も大切な事、主への信頼を実行したのです。主よ、パイロットの運転を導いて下さい、私たちをお助け下さい。旅客機はハドソン川に着水、彼女は155人と共に飛行機の翼に出て、膝まで水につかりましたが全員救助されました。

 困難に直面した時、ヨシャパテとヒゼキヤは神を礼拝し、感謝し、主を信頼しました。極悪のマナセすら、悔い改め、主を信頼して主のあわれみを体験しました。
 
 あなたは、今、焼け野原に立っていますか。涙の海で漂流者になっていますか。聖書の神は、歴史を通してあなたを励ましておられます。
 必ずやり直せる、立ち上がれる、脱出の道はある、笑顔は戻る、と主は言っておられます。あなたの「歴代誌」(クロニクル)を作るのは、あなたとあなたの主です。

「私たちとともにおられる方は、私たちの神、主、私たちを助け、私たちの戦いを戦ってくださる方である。」(32:8)

 →あなたの番です
  □困難な時こそ、主に感謝し、主を礼拝する  
   □主が道を開かれる