歴代誌第一


 
やり直したい人に、勇気と指針を与えてくれる。それが歴代誌です。

1、系図の意味

 歴代誌第一は、1~9章の系図、10~29章のダビデの生涯と二つに分けられます。系図は、神がアダムを造ったところから始り(歴代誌第一1:1)、アブラハム(1:27)、ヤコブの12人の子供(2:1~2)、そしてダビデ(2:15)、ソロモン(3:5)、その後のユダの王たち(3:10~16)と続きます。実に壮大な系図です。

全イスラエルは系図に載せられた。それはイスラエルの王たちの書にまさしくしるされている。ユダは、不信の罪のために、バビロンに捕え移されていた。ところで、彼らの所有地である彼らの町々に最初に住みついたのは、イスラエル、祭司たち、レビ人および宮に仕えるしもべたちであった。エルサレムには、ユダ族、ベニヤミン族、エフライムおよびマナセ族の者が住みついた。(歴代誌第一9:1~3)

「全イスラエルは系図に載せられた。」とあります。この系図は、バビロン捕囚から戻ってきたユダヤ人につながります。1~9章の系図は、ユダヤ人に自分のルーツがどこにあるのか教えてくれます。私は神に作られたのだ。神に選ばれたアブラハムの子孫なのだ。エジプトの奴隷状態から主によって救われた者であるとの自覚が生まれます。

 サムエル記と列王記はイスラエルの王国の歴史を取り上げているので、歴代誌と良く似ていますが、視点がかなり違います。
列王記はエルサレム陥落からあまり時間がたっていない頃に書かれ、王国が滅びた原因に焦点が当たっています。一方、歴代誌は、バビロンからエルサレムに戻った人によって紀元前450年頃に書かれたもので、未来志向の視点があります。
 捕囚から戻った人々によって神殿は建設されましたがかつての栄光はなく、城壁もなく、王国再建の熱意が冷めていました。そのような時に、王国が滅びた原因を見つけるのではなく、王国再建の秘訣が歴史に隠されていないかと再点検したのが歴代誌なのです。温故知新。歴代誌は未来志向なのです。

私たちも自分の救われたルーツを再確認すると、勇気が湧き、感謝が生まれます。今たとえ困難の中にいても、私は神に愛され、覚えられていると分かるのです。


2、神礼拝を中心に据える

 後半の10~29章の中心テーマはダビデです。
歴代誌は、預言者ナタンやガドの言行録やイザヤの文書など16の第一次資料を用いて綿密な歴史的事実を掘り下げました。けれども、ゴリアテとの対決、サウルに命を狙われた逃亡生活、バテシェバ姦淫事件、アブシャロムのクーデターなど既知の歴史を割愛しました。その代わり、神を愛す信仰姿勢、賛美や礼拝を熱心に求めるダビデの姿をクローズアップしました。

それから、レビ人の中のある者たちを、主の箱の前に仕えさせ、イスラエルの神、主を覚えて感謝し、ほめたたえるようにした。かしらはアサフ、彼に次ぐ者は、ゼカリヤ、エイエル、シェミラモテ、エヒエル、マティテヤ、エリアブ、ベナヤ、オベデ・エドム、エイエル。彼らは十弦の琴や、立琴などの楽器を携え、アサフはシンバルを響かせた。祭司ベナヤとヤハジエルは、ラッパを携え、常に神の契約の箱の前にいた。
その日その時、ダビデは初めてアサフとその兄弟たちを用いて、主をほめたたえた。
(歴代誌第一16:4~7)

 神の箱をオベデ・エドムの家からエルサレムに運ぶと決めたのはダビデでした。都を都たらしめるのが神殿であり、神を礼拝することが王国の基盤だとダビデは考えたのです。ダビデの姿勢を見習いたい。歴代誌の著者はそう考えました。

神の箱を運ぶとき、ダビデの発案でレビ人による聖歌隊が組織されました。歴代誌は、賛美のイニシアティブをとったダビデの姿を強調しています。聖歌隊のリーダーとして、アサフ、ヘマン、エドドンなどが指名されました。

聖歌隊は、昼も夜も交代で一日中、神をたたえ続けました。「立って朝ごとに主をほめたたえ、賛美し、夕べにも同じようにすること。」(23:30)彼らは「主にささげる歌の訓練」を受けた者たちで、「彼らはみな達人であった」(25:7)。25章には、バビロン捕囚から帰って来たレビ人の聖歌隊の奉仕分担表が記録されています。

神の箱がエルサレムに運ばれたときに歌われたのが16:8~36の詩でした。これは詩篇105篇です。エジプトからイスラエルの民を救い出された神をたたえる詩篇です。

主に感謝して、御名を呼び求めよ。そのみわざを国々の民の中に知らせよ。
主に歌え。主にほめ歌を歌え。そのすべての奇しいみわざに思いを潜めよ。
主の聖なる名を誇りとせよ。主を慕い求める者の心を喜ばせよ。
主とその御力を尋ね求めよ。絶えず御顔を慕い求めよ。
主が行なわれた奇しいみわざを思い起こせ。その奇蹟と御口のさばきとを。
主のしもべイスラエルのすえよ。主に選ばれた者、ヤコブの子らよ。
 (16:8~13)

捕囚から帰還したユダヤ人が、この箇所を読んだなら特別な感慨を持ったはずです。エジプトから救い出されて約束の地に定住できた事と、バビロンからエルサレムに戻れた事は見事に重なります。
神を礼拝することを第一にして、荒廃したエルサレムを再び主の栄光輝く都にしようとバビロン捕囚から帰還した者たちは考えたことでしょう。

ダビデはソロモンに神殿建設を託しました。28~29章に詳しく書いてあります。

わが子ソロモンよ。今あなたはあなたの父の神を知りなさい。全き心と喜ばしい心持ちをもって神に仕えなさい。主はすべての心を探り、すべての思いの向かうところを読み取られるからである。もし、あなたが神を求めるなら、神はあなたにご自分を現わされる。もし、あなたが神を離れるなら、神はあなたをとこしえまでも退けられる。今、心に留めなさい。主は聖所となる宮を建てさせるため、あなたを選ばれた。勇気を出して実行しなさい。」(28:9~10)

ダビデは、神殿建設のために仕様書を作り(28:11~12)ソロモンに手渡しました。「私は全力を尽くして、私の神の宮のために用意をした。」(29:2)と述べたように、ダビデは今の自分ができる最善を主にささげ、民の指導者らも自発的に神殿建設のために金銀をささげました。

歴代誌第一をまとめます。未来を豊かにするためには、自分が救われたルーツを確かめましょう。そして、信仰の原点に立ち戻り、神を心から礼拝し賛美しましょう。

朝のディボーションは継続していますか。日曜の礼拝を最優先していますか。あなたの信仰の原点である、信仰告白した場面やバプテスマ式、自分自身を主にささげた日などを思い起こして下さい。信仰のスタートラインに戻り、感謝し、新たな思いで未来に向かって下さい。

「わが子ソロモンよ。今あなたはあなたの父の神を知りなさい。全き心と喜ばしい心持ちをもって神に仕えなさい。」

→あなたの番です  
 □系図に名を入れてくれた主に感謝する
 □人生をやり直すために、主を心の中心に置く