ヤコブの手紙

 「行いのない信仰は、死んでいるのです。」(ヤコブ2:26)
 このことばのように、ヤコブの手紙は厳しいという印象があります。ヤコブの手紙を読み解く鍵は、手紙をもらった人々の状況、そして、主イエスが語られた山上の垂訓にあります。


1、主イエスのように考える
 主イエスの弟であるヤコブは(マタイ13:55)、主イエスの復活後主イエスを信じ(使徒1:14)、エルサレム教会の中心人物(使徒15:13、ガラテヤ1:19)になりました。新約聖書の中で最も古い手紙の一つがこのヤコブの手紙です。迫害のためにエルサレムから各地に散らされたユダヤ人クリスチャンを励ますために書かれました。(ヤコブ1:1)

先週学んだ「ヘブル人への手紙」も、迫害の中にいたユダヤ人クリスチャンに書かれたものでした。苦しい中で信仰を守り通すために、主イエスがまことの救い主だと確認し、主イエスから目を離さないようにと語っていました。
「ヤコブの手紙」も同じような読者を想定していますが、その内容を簡潔に言うならば、主イエスのように考え、主イエスのように行動せよとなります。

私の兄弟たち。さまざまな試練に会うときは、それをこの上もない喜びと思いなさい。
(ヤコブの手紙1:2)

 試練は嫌なものです。誰も試練は喜べません。けれどもヤコブは、喜べと言いました。主イエスの山上の説教を彷彿させます。主イエスは、そういう人には天の報いが大きいと教えました。ヤコブは、試練で忍耐が育ち、成熟すると述べました。試練を表面的に見ず、大きな視点で見ることが大事です。

わたしのために、ののしられたり、迫害されたり、また、ありもしないことで悪口雑言を言われたりするとき、あなたがたは幸いです。喜びなさい。喜びおどりなさい。天においてあなたがたの報いは大きいのだから。(マタイ5:11~12)

迫害や苦しみの中にいる人にとって、物事の洞察力はとても大切です。

あなたがたの中に知恵の欠けた人がいるなら、その人は、だれにでも惜しげなく、とがめることなくお与えになる神に願いなさい。そうすればきっと与えられます。(ヤコブ1:5)

知恵というのは、迫害や試練の真相を見極める洞察力だと思います。今起きている事柄の本質を見抜くのが、主イエスのものの見方であり、本当の「知恵」です。主はあなたのみ知恵を必ず与えてくれます。

迫害を受けている人は、生活の困難を覚え、多くの場合は貧困に苦しみます。ヤコブは、貧しさは高い身分だと説明します。

貧しい境遇にある兄弟は、自分の高い身分を誇りとしなさい。(ヤコブ1:9)

迫害でひどい仕打ちを受けた人は常に怒りモードに入っています。けれどもヤコブは、怒るなと言いました。

愛する兄弟たち。あなたがたはそのことを知っているのです。しかし、だれでも、聞くには早く、語るにはおそく、怒るにはおそいようにしなさい。人の怒りは、神の義を実現するものではありません。(ヤコブの手紙1:19~20)

主イエスも山上の垂訓で、人を「さばいてはいけません。」(マタイ7:1)と言われました。怒った状態で誰かに「ばか者」、「能無し」と言うのは殺人と等しいと語りました。(マタイ5:22)

試練の時、貧しい時、怒りたい時、ひどい仕打ちを受けたとき、主イエスのものの見方をしてみましょう。



2、主イエスのように行動する


 また、みことばを実行する人になりなさい。自分を欺いて、ただ聞くだけの者であってはいけません。(ヤコブ1:22)
 
 たましいを離れたからだが、死んだものであるのと同様に、行ないのない信仰は、死んでいるのです。(ヤコブ2:26)
 
 迫害、試練、経済的困難など生活上の悩みを抱えたときの処方箋は、「行動」です。小さなことでもいいのです。体を動かしましょう。誰かの役にたちましょう。

ヤコブは手紙の中で様々なアクションを勧めています。えこひいきしないで人と接する(2:1~4)、生活に困った人を具体的に助ける(2:15~16)、良い言葉を語る(3:2~12)、平和をつくる(3:13~18)、争わない(4:1~4)、罪を悔い改める(4:8~10)、謙虚に仕事をする(4:13~15)、互いのために祈り合う(5:14~16)。

 心が弱っている人、ダメージを受けている人にとっては、ヤコブの手紙の言葉は厳しいメッセージに聞こえるかもしれません。でも、迫害で苦しむ人へのアドバイスが「行い」であることに注意して下さい。弱っている人、ダメージを受けている人が、誰かのために自発的な行動をすること、それ自体に価値があり、逆に助けになるのです。

生きた信仰は行動します。行動すると、成功もあります、失敗もします。それでよいのです。生きた信仰者は、失敗を重ねながら愛を学び、忍耐を学び、主の力と恵みを発見します。あなたは、今週、何をしますか。アクションしましょう。

あなたがたのうちに苦しんでいる人がいますか。その人は祈りなさい。喜んでいる人がいますか。その人は賛美しなさい。(ヤコブ5:13)

 →あなたの番です
  □主イエスのように考えてみよう
  □主イエスのように行動してみよう